2016 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding molecular dynamics underlying behavioral plasticity
Project/Area Number |
16H06175
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
杉 拓磨 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 特任准教授 (70571305)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 線虫 / 記憶・学習 / デバイス開発 / 顕微鏡開発 / 行動遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物は過去の経験をもとに行動を可塑的に変え, 環境に適応する. これまで, この行動の可塑性機構に関わる多 くの生体分子や翻訳後修飾が同定された. それらの「静的」な分子情報をもとに,可塑性機構を真に理解するた めには, 新たな行動の獲得過程で起こる, 生体分子自体の可塑的で「動的」な化学・物理変化に着目した研究が不可欠である. C. elegansの力学刺激に対する行動の可塑的変化はAVAとAVDの2つの神経細胞におけるAMPA受容体の遺伝子発現変化に起因することが知られていた(Sugi et al. PNAS, 2014他). 本研究者は準備段階の研究からMAP キナーゼがAMPA受容体のプロモーター領域を制御することを見出していた. さらに時系列解析によりMAP キナーゼの活性は通常飼育環境下で経時的に変動する可能性を得ていた. そこで研究計画として(1)変動パターンの力学刺激依存性の解析及び行動解析と(2)MAP キナーゼの経時的変動によるAMPA受容体遺伝子発現制御のメカニズムの解明, の2つの計画を立案した. 平成28年度は, まず計画(1)について,(1a)MAP キナーゼの活性変動パターンが力学刺激に依存して減衰パターンへ変化し, 行動を抑制することを見出した. さらに(1b)MAP キナーゼの活性を非侵襲に計測するため, 1神経細胞レベルで自由行動中の線虫の蛍光輝点を高速で追尾する顕微鏡を作製し, これに線虫の記憶形成を行うための力学刺激デバイスを搭載した. 本顕微鏡では短時間の計測は行えるが, 長時間の計測においては, 蛍光タンパク質の蛍光が褪色することが明らかになった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の計画(1)と(2)について, 概ね当初申請書の通り進行している. さらにMAPキナーゼの活性計測用プローブについてもFRETタイプのプローブの作製に既に着手しており, 顕微鏡の完成とともに本格的な計測に着手することが期待される. 以上の理由から, 達成度は高いと判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
顕微鏡開発の段階で, 蛍光タンパク質の長時間観察における褪色の問題が見られたことから, まずこの問題を解決する. そのため, 新たなLED光源と高感度カメラを新たに購入し, タイムラプスで励起光照射と画像取得を行うことを試みる. さらにMAPキナーゼのFRETプローブを完成させる. 具体的には, ERKなどの既報のMAPキナーゼの酵素活性計測用の蛍光プローブ(Aoki et al.Mol Cell, 2013他)を本研究の標的とするMAPキナーゼの酵素活性計測用に改変する. そして, これをAVAやAVDに導入し, 蛍光輝点追尾装置で定量化する. 一方, 上述計画(2)について, まず変異体のストックセンターより, エピジェネティクス関連因子の変異体を取得し, それらの変異体のMAPキナーゼ欠失変異体と力学刺激応答行動の計測を行い, 主要なエピゲノム修飾と酵素をラフに絞り込む. この実験と並行し, ゲノム編集技術を応用し, エピゲノム操作ツールを開発し, そのバリエーションをさらに増やす. また, 既報のKonermann et al. 2013に倣い, TALE型DNA結合ドメインとエピジェネティック因子にそれぞれ, 光刺激依存的に会合するCRY2ドメインとCIB1を融合し, ツールを光刺激応答性エピゲノム操作ツールに改変する. これらのツールの発展は, 研究の効率化のため, 引き続き, 他大学の協力を得て行う予定である.
|