2016 Fiscal Year Annual Research Report
A landscape community genomics approach for eco-evolutionary feecback in the field
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16H06179
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
内海 俊介 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (10642019)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生態ー進化フィードバック / 群集 / 対立遺伝子頻度 / SNP / 河畔林 / 生物多様性 / 遺伝的多様性 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
河畔林の生物群集における生態-進化フィードバックの統合解明に向けた景観ゲノミクス・アプローチに着手した。まず、群集の主要構成者であるヤナギに優占するヤナギルリハムシのゲノム配列情報の解読を行った。125~150塩基長の270bp、500bp、800bpペアエンドについて、それぞれ430億、134億、439億本以上のリード情報を得られた。さらに、49塩基長の2000bpと5000bpのメイトペアについて、それぞれ90億、100億本以上のリード情報を得られた。 次に、北大雨龍研究林の4河川18地点において同ハムシのサンプリングを行い、形質変異と関連する既知のSNP(一塩基多型)マーカーを用いた遺伝解析を行った。このSNPマーカーの対立遺伝子頻度は、ハムシの局所個体群間で異なっていた。2014年のデータと比較すると、各個体群間で遺伝子頻度が異なる時間変化をしていることが示唆された。付随して、このハムシの個体群はメスに偏った性比構造を持っていることが分かった。性比には顕著な時間変化は認められなかった。このハムシは分散の小さい近交系で、局所的な自然選択によってそれぞれの個体群の対立遺伝子頻度が振動している可能性がある。 同様に、河畔林群集の主要構成者であるハンノキに共生する窒素固定バクテリア(フランキア)についてもサンプリングと遺伝解析を進めた。これについても北大雨龍研究林の4河川を調査地とした。合計211個体のケヤマハンノキの根より根粒を採取しフランキアのDNAを抽出した。nifD-Kスペーサー領域の塩基配列を解析した結果、類似度98%閾値のOTUが27種類も得られた。さらに、異なるOTUのフランキアを単離培養し、ハンノキ実生に添加する温室栽培実験を行ったところ、実生のパフォーマンスはフランキアOTUによって変化することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最初に着手する予定であったハムシのドラフトゲノム解析について、大規模ゲノムデータが得られ、de novoアセンブリの工程に予定通りに進むことができた。de novoアセンブリには大きなメモリによる大規模演算が必要で、現在は遺伝研のスーパーコンピュータを使用して解析を進めているところである。また、河畔林の拡散共進化系の核となるメンバーとして本プロジェクトで注目しているハムシとフランキアについて、野外の河畔林における遺伝解析が順調に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
de novoアセンブリを完了させ、それをもとにしたゲノム解析をさらに進めていく。また、フランキアについては、土壌由来のDNAと根由来のDNAの両方を対象としたメタゲノム解析を行う。そして、それらと環境情報を統合した景観ゲノミクス解析を実行する。さらに、野外の大型メソコスムの実験準備が整ったため、今年度は大型メソコスムでの進化実験を開始する。
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