2016 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ地球微生物学:微生物が作り出す酸化鉄ナノ粒子から探る真の元素循環プロセス
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16H06180
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
加藤 真悟 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 次世代海洋資源調査技術研究開発プロジェクトチーム, 特任研究員 (40554548)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 鉄酸化バクテリア / バイオ酸化鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
難培養性の代表格として著名な中性pH付近で生育する微好気性鉄酸化バクテリアは、細胞外に特長的な形態の酸化鉄の構造体(BIOS)を産出することが知られている。研究代表者のこれまでの研究により、ナノサイズの酸化鉄の構造体BIOSを産出する微好気性鉄酸化バクテリアの存在が明らかになった。本研究では、サイズの小さなBIOSに着目し、その生成源や産出機構、特性を調べることで、自然界での元素循環における役割を明らかにすることを目的とした。研究初年度である平成28年度は、(1)汽水環境から研究代表者が分離したBIOSを産出する新奇汽水性鉄酸化バクテリアCP-5株、CP-8 株の性状解析および全ゲノム配列決定、(2)海洋性BIOS産出鉄酸化バクテリアの存在が示唆される海底硫化物試料のメタゲノム解析、(3)サイズの小さなBIOSの特性分析に必要不可欠なバイオリアクターを用いた微好気性鉄酸化バクテリアの大量培養法の確立、を行った。 (1)については、CP-5株とCP-8 株はpH8を超える条件下でも生育できること、同株が産出するBIOSは比較的大きめであり(サブミクロンー数ミクロン)、他の淡水性や海水性鉄酸化バクテリアが産出するBIOSとは形態が異なること、BIOSには鉄の他にもリンを多く含むこと等が明らかになり、これまでの鉄酸化バクテリアに関する常識を覆すような予想以上の成果があがっている。全ゲノム解析によって、CP-5株とCP-8 株は他の淡水性や海水性鉄酸化バクテリアと同様のBIOS産出機構を有していると推定された。(2)についても順調に進み、未培養性の海洋性BIOS産出鉄酸化バクテリアのほぼ完全長のゲノム配列の再構築に成功しており、論文執筆中である。(3)については、大量培養のためのバイオリアクターを購入できたが設置・試験までには至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績の概要にある通り、すでにいくつかの成果が上がっており、成果の一部ついては、共著論文がGeobiology誌に受理され、残りの成果についても現在国際誌に投稿中、もしくは論文準備中である。BIOSの特性分析については、大量培養によるBIOSの大量生産が必要であるが、そのためのバイオリアクターの設置に至っておらず、やや遅れていると言わざるを得ない。研究計画全体としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、モデル地とした淡水、汽水、海水環境から、BIOS産出能をもつ鉄酸化バクテリアの分離培養を試み、その産出機構や特性分析を進める。特に、バイオリアクターを用いた鉄酸化バクテリアの大量培養法およびBIOSの大量産出法の確立を重点的に行い、得られたBIOSの詳細分析により、その特性を明らかにしていく予定である。
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