2017 Fiscal Year Annual Research Report
「Oxidative Window」による麦類の種子休眠・発芽機構の再考
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16H06183
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石橋 勇志 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50611571)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 種子休眠 / 種子発芽 / 活性酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
オオムギ種子の発芽試験により、過酸化水素により発現上昇し、アスコルビン酸ナトリウムで発現抑制された活性酸素応答遺伝子(Responsive gene of reactive oxygen species for germination; RRGs)について、休眠および非休眠種子を用いて、機能解析を行った。RRG1遺伝子は、休眠種子でより発現量が低く、非休眠種子では発芽と共に発現量が上昇した。さらに、in situ hybridizationによりその発現部位が明らかとなり、胚盤上皮細胞やアリューロン細胞において発現が高い事が確認された。さらに、RRG1と植物ホルモンの関係を調査したところ、発芽抑制に関わるアブシジン酸によって胚における発現が抑制される事が明らかとなった。しかしながら、発芽促進に関わるジベレリンには反応しなかった。一方、アリューロン細胞では、RRG1はジベレリンにより発現が促進し、アブシジン酸により抑制された。以上の結果は、胚盤上皮細胞とアリューロン細胞でRRG1の作用が異なる事を示した。また、登熟期間の遺伝子発現を休眠性の異なる品種で確認したところ、RRG1は休眠性の高い品種で低く、休眠性の低い品種で高い事が示された。以上の結果は、RRG1はアブシジン酸に発現を制御されるタンパク質であり、種子休眠に関与し、ムギ類栽培で問題になる穂発芽耐性へも寄与する事が示された。現在、RRG1の形質転換体を作成しており、その表現型から本遺伝子の機能を詳細に解析する。さらにその他のRRGs遺伝子についても次年度、解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の活性酸素応答遺伝子(Responsive gene of reactive oxygen species for germination; RRGs)の内、RRG1の機能解析について局在やホルモン応答などを明らかにすることができた。更に登熟過程においても、休眠性との関連が確認され、本遺伝子は、これまでに報告のない新規の遺伝子であることから種子休眠・発芽機構において非常に興味深い。さらに、その他のRRGsについても、いくつか重要な候補遺伝子を絞り込む事がでた。
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Strategy for Future Research Activity |
RR1については、現在、形質転換体を作成中であり、発芽試験を実施する事で本遺伝子の種子休眠における役割を明らかにできると考える。さらに、形質転換体を用いて、RRG1と相互作用する因子の解析を行なうことで、RRG1の機能を詳細に明らかにする。また、その他の候補遺伝子についても、予備試験により非常に興味深い結果が得られており、こちらも詳細に解析する事で、活性酸素により機能する複数の遺伝子について、その機能が明らかになると思われる。
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