2016 Fiscal Year Annual Research Report
サクラ属自家不和合性に特異な「自己認識」システムの分子機構解明
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16H06184
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
松本 大生 山形大学, 農学部, 助教 (30632129)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自家不和合性 / サクラ属果樹 / F-boxタンパク質 / SCF複合体 / S-RNase |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、サクラ属のS-RNase依存性自家不和合性にみられる特異な「自己認識」システムの分子機構解明を目的に、作業仮説「自己特異的ジェネラルインヒビター(GI)分解モデル」を生化学的に検証することを計画している。初年度にあたるH28年度は、以下の調査を実施した。 A.in vitro 自己花粉管伸長阻害アッセイを利用した、和合・不和合花粉管における自家不和合性関連タンパク質の比較:花柱から粗精製したS-RNaseを花粉発芽培地に加え,自己花粉ならびに非自己花粉を培養し,それらの花粉管に含まれる自家不和合性関連タンパク質の一部(S-RNase,SLFL2,SSK1)について発現量を比較した.和合花粉ではS-RNaseが、不和合花粉ではSLFL2が減少するという予測と反し,in vitro和合・不和合花粉管の間でこれらタンパク質の量に顕著な差は見られなかった。 B.組換えS-RNaseと結合する自己花粉管タンパク質の探索:‘佐藤錦’の試験管内発芽花粉からタンパク質を抽出し,組換えS6-RNaseをベイトに免疫沈降を行い,回収画分に含まれる全タンパク質をMS/MSによって同定した。回収画分はGI候補であるSLFL2やその結合タンパク質が主であり、新規のS-RNase結合花粉タンパク質候補も見出された一方、自己特異的に結合すると予測されていたSFBは回収画分に見いだされなかった。 C.新規GI候補の探索:SLFL2と系統的に近い花粉発現F-box遺伝子4つについて、佐藤錦花粉mRNAから全長--配列を単離し,それら組換えタンパク質のS-RNase結合性を調査した.今回調査したもののうちの一つについて特定のS-RNase対立遺伝子産物と結合することが確かめられ、このF-boxタンパク質はSLFL2と一部冗長的にGIとして機能している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定では初年度は、in vitro自己花粉管伸長阻害アッセイを利用して和合・不和合花粉管タンパク質の網羅比較同定ならびにユビキチン化タンパク質の比較を行おうとしていたものの、Aで示したようにin vitro自己花粉管伸長阻害アッセイが不和合反応を正確に再現できていない可能性が危惧された。そこで本年度の実験をBならびにCに切り替えたところ、一定の知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
和合・不和合花粉管に含まれるユビキチン化タンパク質の比較にin vitroアッセイが適していない可能性が明らかになったことから,次年度は和合・不和合受粉雌蕊をサンプルとして調整し、再度ユビキチン化タンパク質の比較を試みる予定である。また、SFBの抗体を作製し、花粉内生SFBを用いてSFB・S-RNase間の結合性を再度検証する予定である。
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