2016 Fiscal Year Annual Research Report
Development of effective plant-symbiotic microbes system by metagenome and cultivation of non-culturable microbes
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16H06196
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
谷口 武士 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 准教授 (10524275)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メタゲノム / アーバスキュラー菌根菌 / 内生菌 / 乾燥 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は2017年2月~3月に調査地であるアメリカ・カリフォルニア州に位置するDeep Canyon 研究センターにおいて調査を行った。これまで継続してきたEncelia farinosaの根に共生する微生物の季節性について調べるため、葉の蒸散速度を測定するとともに、葉の炭素安定同位体比、根圏微生物のメタゲノム解析、メタトランスクリプトーム解析を行う目的で葉、根、土壌の採取を行った。 本年度、明らかになったこととしては、調査サイトで優占する9樹種の干ばつ前後の生存率に関する比較から、研究対象としているEncelia farinosaは他の樹種と比べて耐乾性が低く、厳しい干ばつによって大部分が枯死するものの、その後の降雨によって実生更新が速やかに起こることで個体群を維持していることが分かった。このことから、この植物の定着を促す微生物に着目する際、実生更新に関わる微生物について調べる必要性が考えられた。また、Encelia farinosaの根の内生微生物に関するメタゲノム解析から、細菌と菌類ともに雨季の3月よりも乾季の6月、および9月における微生物群集の植物個体間でばらつきが小さく、乾季には乾燥ストレスに適応した微生物種に根内微生物が制限されてくる可能性が考えられた。夏の降雨後の短期的な土壌水分の変化に対応した土壌微生物相の変化を調査するために行った水添加試験のデータ解析を行ったところ、水添加から8日後に土壌微生物は一定の群集構造に収束していく傾向が認められた。以上のように、乾燥ストレス、あるいは乾燥後の降雨によって一定の微生物群集への収束が起こる可能性が考えられ、どのような微生物を中心としたどのような機能をもった群集への変化が起こっているのかについて調査とデータ解析を進める必要性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)根圏微生物の生態・機能的特性、複合微生物共生系を構成する微生物種の探索 これまでに採取した根内微生物に関するメタゲノム解析は予定通り進んでいるものの、予算について検討した結果、当初予定していた6月と9月のアメリカ出張が難しく、2月に行う予定であった根圏土壌を用いたメタゲノムおよびメタトランスクリプトーム解析は予備試験を行う段階に留まっている。また、根内の細菌についてメタゲノム解析を行ったところ、植物の葉緑体DNAやミトコンドリアDNAのシーケンスが非常に多かったため、植物根中の細菌のメタゲノム解析についてプライマーの再検討の必要性が出てきた。採取土壌を用いた乾燥ストレス実験については、採取土壌を用いた予備試験を進めており、ほぼ予定通りに進んでいる。
(2)難培養微生物を含む有用微生物の分離・培養 本年度は倒立顕微鏡を導入したもの、マイクロマニュピレーターを導入できなかったため、こちらを利用した分離試験を行うことはできなかった。しかしながら、代用法としてゲランガムを用いた方法(Silvani et al., 2008 SBB)による難培養微生物の分離方法について検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)根圏微生物の生態・機能的特性、複合微生物共生系を構成する微生物種の探索 野外におけるメタトランスクリプトーム解析については、雨季と乾季に関する調査を十分に行うためのサンプリング回数を確保することが難しいため、乾季に水添加試験を行うことで、乾燥した環境と湿った環境における微生物の応答と機能性について評価を行う。本試験は予備試験が必要であるため、本年度6月に予備試験を行い、来年度6月に本試験を進める。メタトランスクリプトーム解析については、本年度6月にアメリカの共同研究者の実験室においてさらなる予備試験を進める。植物根内の細菌の解析で植物DNAが多かった問題では、植物の対象領域と細菌のプライマーとの相同性検索を行うことで、配列が異なるプライマーを用いた解析を行う。
(2)難培養微生物を含む有用微生物の分離・培養 本年度はマイクロマニュピレーターを導入する。また、修士学生の研究テーマとすることで微生物の分離培養と接種試験を推進する。
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