2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of effective plant-symbiotic microbes system by metagenome and cultivation of non-culturable microbes
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16H06196
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
谷口 武士 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 准教授 (10524275)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メタゲノム解析 / 乾燥地 / 乾燥ストレス / 根圏微生物 / 菌根菌 / 内生菌 / 内生細菌 / ショットガンメタゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年6月、および9月に調査地であるBoyd Deep Canyon Desert Research Instituteにおいて調査を行った。これまで継続してきたEncelia farinosaの根に共生する微生物の季節性について調べるため、葉の蒸散速度の測定、炭素同位体分析用の葉のサンプリング、および微生物相のメタゲノム解析用の根のサンプリングを行った。 調査サイトで優占する9樹種の微生物群集に関するデータ解析を行い、研究対象であるEncelia farinosaが根圏微生物群集の観点で重要な植物であることや、それぞれの植物に特異的な微生物種や本生態系で重要な微生物種の推定を行うことができた。年間を通して放線菌と菌根菌が重要であることが示唆された。 また、ポット実験によって、乾燥条件下でE. farinosaに重要な根圏微生物とその機能に関する研究を行った。この結果として、非根圏土壌や根圏土壌の微生物群集と内部根圏微生物群集が大きく異なること、そして内部根圏微生物については乾燥条件下と湿潤条件下で菌類と細菌の双方で異なる傾向が認められた。一方で、アーバスキュラー菌根菌については違いが認められなかった。機能性については、5種類の酵素活性を測定したところ、炭素および窒素分解に関わる酵素活性は乾燥条件下で増加し、一方でリンや硫黄吸収に関わる酵素活性は乾燥によって減少していた。これらのことから、微生物群集は乾燥条件下で変化し、その機能性についても変化していることが確認できた。また、根圏土壌のショットガンメタゲノム解析を行っており、今後、包括的なデータの理解を深める。 ここで得られた、乾燥条件下で重要な微生物種と機能に関する知見は、今後の有用微生物探索に重要であり、今後の実際の微生物の分離培養に基づく機能解析とリンクさせることで、有用微生物探索方法の確立につなげていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)根圏微生物の生態・機能的特性、複合微生物共生系を構成する微生物種の探索 これまでに採取した内部根圏微生物に関するメタゲノム解析を進めることで、植物に重要な微生物とその相互作用に関する解析が可能となり、メタゲノム解析から重要微生物とその組合わせを推定する準備が整った。また、根圏土壌の酵素活性に関する解析から、機能性に関する解析が進んでいる。メタトランスクリプトーム解析については、根圏土壌から回収できたRNA量が少なかったため、条件を検討しなおしたが、解析に不安があったため、ショットガンメタゲノム解析を行うことで機能性に関する情報を得た。上のような状況から、根圏微生物の生態・機能的特性、複合微生物共生系を構成する微生物種の探索についてはおおむね順調に進んでいる。 (2)難培養微生物を含む有用微生物の分離・培養 昨年度の倒立顕微鏡に続き、本年度はマイクロマニュピレーターを導入できたため、難培養微生物を分離する基盤が整った。これらの機器を用いた分離・培養と接種試験はこれから行う状況であるが、メタゲノム解析から放線菌など調査対象微生物種の目星がついてきたため、今後、円滑に研究が進むことが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)根圏微生物の生態・機能的特性、複合微生物共生系を構成する微生物種の探索 ポット実験から回収した根圏土壌を用いたメタトランスクリプトーム解析については、RNA抽出を行ったものの回収量が少なかったため、ショットガンメタゲノム解析を代替方法として使用することで対応したが、メタトランスクリプトーム解析の予備試験を引き続き進めていくことで、機能解析に関する情報を充実させる。 (2)難培養微生物を含む有用微生物の分離・培養 微生物の分離・培養については、対象とする微生物群が絞れてきたため、選択培地を用いた培養、およびこれまでの報告から分離・培養が難しいと思われる微生物について、マイクロマニュピレーターを用いた分離を検討する。これらの微生物を用いて、まずは単独接種試験を行い、続いて、複数種を組み合わせた接種試験を行っていきたい。
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