2016 Fiscal Year Annual Research Report
理論化学と実験化学が拓く高フッ素系官能基化法の開発と機能発現
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16H06214
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 圭一 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (40633392)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フッ素 / パーフルオロアルキル / 銅アート / 銀アート |
Outline of Annual Research Achievements |
芳香環への様々なフッ素系官能基の導入を目指した研究を行った。当初の計画通り、銅アート塩基による芳香族C-H結合のメタル化反応により生じるアリール銅アート種の高フッ素化超原子価ヨウ素試薬による酸化反応を種々検討し、様々なパーフルオロアルキル基が導入できることは見出したものの、目的物は低収率にとどまっている。そのため、収率の改善や新たな化学的展開を志向してアート塩基の中心金属を銀とする新たなアート塩基をデザインし、芳香環のメタル化(銀化)反応とアリール銀アート種の反応性の検討を行っている。実際に、メタル化段階においては銀アート塩基は銅をはるかに凌駕する化学選択性を示すことが分かっており、より一般的かつ実用的な芳香環の官能基化反応への大きな一歩を拓くことができた。本年度は、これまでの銅を用いた検討に加え、銀を用いて詳細にフッ素官能基導入を検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、フッ素系官能基導入における基盤となる芳香族メタル化反応においては、銅アート塩基を用いた位置および化学選択的メタル化反応の技術を確立し[Hirano et al. JACS 2016]、およびさらに洗練を加え実用レベルの技術とした。これを用いたフッ素系官能基、特にパーフルオロアルキル基を導入する官能基化反応の開発においてはやや苦戦しているものの、目的物を得ることには成功している。 一方、収率改善の糸口の一つとして全く新しい銀アート塩基をデザインし、これを用いた芳香族メタル化反応が進行することを見出した。本反応は非常に高い官能基選択性をもって進行し、エステルなど通常有機金属試薬では付加を受け分解してしまう極性官能基の存在下においても定量的にメタル化反応のみを進行させることができる。この新しい発見は、本課題の遂行において大きな武器になるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、銀アート塩基を用いた新しいメタル化反応を開発することができたため、今年度はこれまでの銅を用いた手法に加え、銀アートの化学によって芳香環へのフッ素系官能基導入を行う予定である。また、アリール銀アート化学種自体、これまでにほとんど注目されておらずその物性や反応性が未知である。そのため、その基礎的な性質を調査・精査することに全く予想もしない反応性や利用法を発見できる可能性も高く、フッ素官能基導入への利用を主眼にしながらもそこにとらわれずに広く検討を行っていく予定である。
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