2017 Fiscal Year Annual Research Report
興奮-転写連関による転写遺伝子の特異的選択機構の解明
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16H06215
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
鈴木 良明 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 助教 (80707555)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 薬学 / 薬理学 / 生理学 / 生体分子 / シグナル伝達 / イメージング / カルシウムシグナル / 平滑筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
①カベオリン1(cav1)遺伝子が欠損し、平滑筋のカベオラ構造が消失するcav1-KOマウスを用いて、カベオラ構造あるいはcav1が興奮-転写連関(E-T coupling)にどのように関与するか検討した。cav1-KOマウスの腸間膜動脈平滑筋において、E-T couplingの効率(脱分極刺激後のCREBのリン酸化の割合)に変化が生じるという結果を得た。このE-T couplingの効率化に対して、カベオラというシグナルドメイン構造が重要なのか、あるいはcav1が下流分子の活性を制御しうるのか、検討中である。 ②血管平滑筋細胞株A10細胞を用いて、増殖型から収縮型へのフェノタイプスイッチの制御方法について検討した。その結果、ポストコンフルエント状態から3日以上無血清培地で維持することによって、収縮型平滑筋細胞に特有の電位依存性Ca2+チャネルの発現上昇が認められた。この系を用いることで、E-T couplingのシグナル経路の可視化やフェノタイプスイッチのメカニズムの解析が容易になると期待される。 ③A10細胞や培養した血管平滑筋細胞を用いて、細胞質・ミトコンドリア・筋小胞体(SR)のCa2+濃度変化の測定を行った。その結果、ミトコンドリアとSRを結び付けるミトフュージン(Mfn)が、両オルガネラ間のカルシウムシグナリングの連関に重要な役割を担うことを明らかにした。この連関がミトコンドリア膜電位の形成やATP産生、細胞増殖に関わることも明らかにした。 ④ジャンクトフィリン2(JP2)が収縮型血管平滑筋細胞において細胞膜と筋小胞体を結び付けて静止張力の維持に重要であることを明らかにした。また、血管平滑筋細胞を培養して増殖型に変化させるとJP2の発現が変化することが判明した。この発現変化が細胞内Ca2+シグナルに対してどのような影響を及ぼすか検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①E-T couplingについて平滑筋を標的とした研究報告はごく僅かである。我々も腸間膜動脈平滑筋組織において、脱分極刺激によってE-T coupling(CREBのリン酸化)が実際に起こることを確認した。しかし、当初は安定した結果を得ることが困難な状況であった。本年度中にプレパレーションの条件を試行錯誤して最適化することで、安定した結果を得ることが可能となり、cav1-KOマウスを用いた比較検討が可能となった。
②これまで細胞質のカルシウムイメージングを主に行ってきたが、本年度はオルガネラ局在型の合成指示薬やタンパク質型カルシウムセンサーを用いて、ミトコンドリアおよびSRのカルシウムイメージングに挑戦した。これによりMfnのミトコンドリア-SR間のカルシウムシグナルのクロストークを解析することが可能となった。膜電位やATP量の可視化解析により、カルシウム濃度変化後の下流シグナルについても検証することができた。
③細胞膜-SR間およびミトコンドリア-SR間を近接させる分子としてJP2とMfnの機能を明らかにしてきた。これらの分子が収縮型のみならず増殖型の平滑筋でも重要な役割を持つことを示唆する結果を得た。現在、増殖型平滑筋へのフェノタイプスイッチあるいはその後の細胞増殖への寄与について検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
各種刺激に対する血管平滑筋の分化・増殖関連遺伝子の選択的転写機構に対する足場タンパク質の寄与を機能分子やCa2+の同時蛍光イメージングにより明らかにする。
「E-T couplingの多様性と特異性を生む機構の解明」カベオラ構造あるいはカベオリン1(cav1)がE-Tカップリングにどのように関与するか明らかにする。現在までにcav1遺伝子が欠損したcav1-KOにおいて、E-Tカップリングの効率に変化が生じうるという結果を得ている。今年度は、カベオラというシグナルドメイン構造あるいはcav1という分子のどちらがE-Tカップリングを制御しうるか解明する。具体的には、カベオラを破壊する試薬であるメチルベータシクロデキストリンを処置した血管とcav1-KO由来の血管の結果の比較を行う。また、E-Tカップリングの下流にあるCaMK経路とRhoA-ROCK経路のクロストークについてもマウス由来血管平滑筋あるいはラット血管平滑筋細胞株(A10)を用いて明らかにする。
「オルガネラ間のCa2+シグナル連関とその基盤となる機構の解明」A10細胞や培養した血管平滑筋細胞を用いて、細胞膜-ミトコンドリアー筋小胞体(SR)のCa2+濃度変化の測定を行った。その結果、ミトコンドリアとSRを結び付けるミトフュージン(Mfn)が、両オルガネラ間のカルシウムシグナリングの連関に重要な役割を担うことを明らかにした。また、ジャンクトフィリン2(JP2)が収縮型血管平滑筋細胞において細胞膜と筋小胞体を結び付けて静止張力の維持に重要であることを明らかにした。今年度はこれらの分子の収縮型および増殖型血管平滑筋細胞における発現変化やその機能を解明する。特に細胞内Ca2+シグナリングや細胞増殖への影響について重点的に行う。
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Research Products
(35 results)