2017 Fiscal Year Annual Research Report
クロロアルケン型ペプチド結合等価体を基盤とする実践的創薬研究
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16H06217
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鳴海 哲夫 静岡大学, 工学部, 准教授 (50547867)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、ペプチド結合等価体を活用し、ペプチドの易水解性や代謝、凝集に起因する問題を解決することを目的としている。平成29年度は、以下に示す二つの研究課題を実施した。 ①加水分解耐性型ヒト2型NMU受容体選択的アゴニストの創製 平成28年度の検討によって顕在化したArg-Asn配列に相当するクロロアルケン型ペプチド結合等価体の合成経路における課題を解決すべく、合成経路の初期段階におけるα,α-ジクロロ-β-アミノ酸を合成する5工程について検討を行なった。Swern酸化およびイミン形成において当量および反応時間の最適化によってEllmanイミンまでは収率の向上が可能になった一方で、続くマンニッヒ反応およびmCPBAによる酸化反応において所望のマンニッヒ生成物に加え、回転異性体が相当量が生成することが示唆された。また、平成28年度に確立した合成経路に回転異性体を応用すると収率が低下することから、今後さらなるマンニッヒ反応およびmCPBAによる酸化反応からなる2工程において精査が必要である。 ② ペプチド結合等価体によるアミロイド形成反応の解析 アルツハイマー病の発症に関与するアミロイドβのアミロイド原性の高いコア領域に相当する7残基ペプチドのうち、線維化に特に重要なPhe-Phe間のペプチド結合をクロロアルケンに置換したペプチドミメティックを合成し、ペプチド結合の等価置換に伴うアミロイド線維の形態変化を解析した。アミド型ペプチドは長く直線的なアミロイド線維を形成したのに対し、クロロアルケン型ペプチドミメティックは、短くねじれた線維が多数積層した一定の規則性を持った凝集体を形成することを明らかにした。無置換アルケンによるペプチド結合の等価置換ではアミロイド線維を形成せず、球状凝集体を形成することが報告されていることから、塩素原子が線維形成に寄与しているものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究では、Arg-Asn配列に相当するクロロアルケン型ペプチド結合等価体の合成における課題が、マンニッヒ反応およびmCPBAによる酸化反応であることを明らかにした。また、クロロアルケン型ペプチド結合等価体の応用研究として、アミロイドペプチドに応用することで、塩素原子がカルボニル酸素等価体として機能することを明らかにした。さらに、アミロイド線維の形態観察を行い、アミロイド形成反応におけるカルボニル酸素およびその等価体に起因する分子間力の重要性に関する知見を得ることができた。これらのことから、4年計画の2年目までに予定していた研究はほぼ順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ペプチド結合の炭素-炭素二重結合による等価置換におけるクロロアルケン型ジペプチイソスターの機能評価については一応の成功を納めていると判断している。引き続き、ヒトNMU受容体選択的アゴニストを含む生理活性ペプチドにおけるクロロアルケン型ペプチド結合等価体の有用性の検証を行う。平成29年度で見出したアミロイドペプチドの線維形態の変化の詳細を明らかにするために、複数のペプチド結合等価体との比較を含め、アミロイド線維形成における水素結合をはじめとする分子間力の重要性を明らかにする。また、ペプチド性有機分子触媒系における弱い分子間力を利用することで、塩素原子が有する水素結合能を定量的に評価する予定である。
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Research Products
(17 results)