2016 Fiscal Year Annual Research Report
死にゆくがん細胞が発信するがん制御ネットワーク機構の遺伝的基盤
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16H06222
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榎本 将人 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (00596174)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腫瘍内不均一性 / 代償性増殖 / 細胞間相互作用 / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
多細胞生物において、死にゆく細胞はその死の代償として周辺細胞の増殖を促す「代償性増殖」によって組織の正常発生や恒常性維持を制御しており、その分子機構が分かってきた。最近、このような生体恒常性維持機構としての代償性増殖システムががんの発生・進行にも関わっている可能性が示唆されている。しかしながら、代償性増殖によるがん進展制御の分子基盤はよく分かっていない。そこで本研究は、死にゆくがん細胞とその周辺の細胞との相互作用によるがん進展機構を生体レベルで明らかにすることを目的とした。 当該年度では、まずショウジョウバエの遺伝的モザイク手法を用いることでショウジョウバエ上皮に2種類のがん原性細胞集団を誘導し腫瘍内不均一性を生体レベルで再現し、死にゆくがん原性細胞と共存した時に腫瘍悪性化能を獲得する腫瘍細胞を探索した。これまでに、がん遺伝子Srcを活性化した細胞集団(Src活性化細胞)は正常細胞(野生型細胞)と隣接すると細胞死を引き起こして組織中から消失していくことが分かっている。そこでSrc活性化細胞と隣接するように異なるがん原性細胞を誘導したところ、がん遺伝子であるRasが活性化した細胞集団(Ras活性化細胞)はSrc活性化細胞と隣接した時に隣接組織である中枢神経系へと浸潤・転移した。さらに興味深いことに、このときRas活性化細胞集団のみならずSrc活性化細胞も細胞死を回避して腫瘍悪性化能を獲得することが分かった。すなわち、Src活性化細胞がもつ細胞死誘導性のシグナルがRas活性化細胞に腫瘍悪性化能を付加させる一方で、Ras活性化細胞も何らかの機構を介してSrc活性化細胞に悪性化能を誘導することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り生体レベルで腫瘍内不均一性を再現し、がん原性細胞の細胞死が起点となりが腫瘍悪性化能を獲得する2種類の異なるがん原性細胞を同定した。さらに、この腫瘍悪性化には互いの細胞同士の相互作用が重要であることを見出している。これらの理由から当初の予定通り順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Ras活性化細胞とSrc活性化細胞の相互作用を解析し、腫瘍悪性化メカニズムを明らかにする。具体的には、細胞間相互作用により活性化するシグナル伝達経路や代償性増殖に関連するシグナル伝達経路に着目し、腫瘍悪性化能に対するそれらの関与を解析していく。もしこれらのシグナル伝達経路に変化が認められない場合は、染色体欠失系統を用いた遺伝学的スクリーニングを展開していく。
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Research Products
(7 results)