2016 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチン修飾による褐色脂肪細胞分化制御機構の解明
Project/Area Number |
16H06226
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大野 晴也 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 助教 (60725894)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 褐色脂肪細胞 / ヒストン修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
PRDM16/EHMT1を前駆筋肉細胞に導入すると褐色脂肪細胞への分化誘導が認められるが、EHMT1のヒストンメチル化活性を持つ部位であるSETドメインを欠失させる変異体を導入すると褐色脂肪細胞への誘導が解除された。MATIIαはそのEHMT1のSETドメインとのみ相互作用を有しており、MATIIαのノックダウンによってPRDM16/EHMT1複合体のヒストンメチル化活性が抑制されたことから、MATIIαはヒストン修飾を介した褐色脂肪細胞の分化誘導に関与しているのではないかと考えられた。 そこでPRDM16/EHMT1/MATIIα複合体が褐色脂肪細胞の分化決定に与える影響を検討するため、培養前駆褐色脂肪細胞でMATIIαのノックダウンを行い、脂肪細胞へと分化誘導を行った後に、遺伝子発現の変化を検討したところUcp1やCideaなどの褐色脂肪細胞特異的遺伝子の低下を認めた。またRetnやAgtといった白色脂肪細胞特異的遺伝子は上昇していた。そこで上記白色脂肪細胞特異的遺伝子群のプロモーター領域でのヒストン修飾状態をChIPアッセイで検討すると、MATIIαのノックダウンによってH3K9のメチル化が低下していた。以上より、MATIIαは白色脂肪細胞特異的遺伝子群の発現制御部位のヒストンメチル化を抑制することで発現を抑制し、褐色脂肪細胞への分化誘導を制御していると考えられた。 白色脂肪組織中に誘導される褐色脂肪細胞であるベージュ脂肪細胞の分化にもPRDM16/EHMT1複合体は大きな役割を果たしている。そこで、マウス鼠径部白色脂肪組織より採取した初代培養白色脂肪細胞でMATIIαをノックダウンした後に、ベージュ脂肪細胞への分化刺激を加えると、褐色脂肪細胞特異的遺伝子群の低下が認められ、ベージュ脂肪細胞の分化にもMATIIαが重要な役割を果たしているものと考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
褐色脂肪細胞の分化誘導の運命決定を担うPRDM16/EHMT1の構成因子として新たにMATIIαを同定し、その機能解析を順調に行うことができた。 並行して、MATIIαの褐色脂肪組織特異的ノックアウトマウスの表現型の解析予定であったが、当初計画されていたEMMA repositoryより入手した胚から繁殖させたマウスにfloxアリルを確認できなかったため、筑波大学生命科学動物資源センターに依頼しCrispr/cas9を用いた方法で作成した。マウスの表現型解析を行うための繁殖を継続しているところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在繁殖しているMATIIα floxマウスを、myf5プロモーター下にCreを発現するマウス(Jackson Laboratoryより購入済み)と交配させることで褐色脂肪組織特異的MATIIαノックアウトマウスを作成する。出生直後の褐色脂肪組織をマウス肩甲骨間より採取し、組織学的な検討を行う。さらに褐色脂肪細胞特異的遺伝子群の発現解析を定量PCRで解析し、RNAシークエンスも施行して網羅的な遺伝子発現の変化も調べることで、MATIIαが褐色脂肪細胞の分化に与える影響を包括的に検討する。また褐色脂肪組織を採取してH3K9やH3K27などのメチル化に対する抗体で免疫沈降をしChIPシークエンスも行う。 ヒト褐色脂肪細胞株も入手しており、同細胞でのMATIIαの機能欠失モデルを作成し、褐色脂肪細胞特異的遺伝子群の発現検討や酸素消費量の変化なども測定する。
|
Research Products
(4 results)