2018 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザウイルス受容体タンパク質の同定とその標的化合物の探索
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16H06227
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤岡 容一朗 北海道大学, 医学研究院, 講師 (70597492)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エンドサイトーシス / インフルエンザウイルス / イメージング / カルシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に電位依存性カルシウムチャネルがインフルエンザウイルスの宿主細胞への感染において鍵となる受容体タンパク質の一つであることをCell Host & Microbe誌に報告した(Fujioka et al 2018 Cell Host Microbe)。本論文では、電位依存性カルシウムチャネルのノックダウンによりin vitroでインフルエンザウイルスの細胞への取り込みと感染が抑制されることを明らかにした。また、臨床で高血圧治療に用いられているカルシウムブロッカーが同様にイルスの細胞への取り込みと感染抑制効果を発揮することを示した。さらに、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)が電位依存性カルシウムチャネルのシアル酸修飾を介して結合することも示した。実際に電位依存性カルシウムチャネルにおいて糖鎖修飾されるアミノ酸に変異を導入し、糖鎖修飾欠損型変異体を作製したところ、HAとの結合は減弱した。電位依存性カルシウムチャネルをノックダウンした細胞に野生型カルシウムチャネルを発現させたところ、ウイルスの細胞への取り込みおよび感染はレスキューされたが、糖鎖修飾欠損型変異体ではいずれもレスキューされなかった。以上から、電位依存性カルシウムチャネルのシアル酸がHAとの結合およびウイルス感染に重要であることが明らかとなった。また、免疫組織化学染色によりマウス気道組織においてウイルス感染が成立した細胞でカルシウムチャネルの発現が確認された。 最終的には、カルシウムブロッカーをマウスに投与するとインフルエンザウイルス感染が抑制されること、およびヒト気道上皮細胞株を用いた三次元培養系でもカルシウムブロッカーがインフルエンザウイルス感染を抑制することを示した。すなわち、in vivoおよびex vivoでもカルシウムブロッカーがウイルス感染抑制効果を有することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標である、「インフルエンザウイルス受容体タンパク質の同定」に関して、電位依存性カルシウムチャネルがインフルエンザウイルスの細胞取り込みと感染を制御すること、およびカルシウムブロッカーがインフルエンザウイルス感染抑制効果を有することを明らかにし、Cell Host & Microbe誌に発表することができた。さらに、免疫組織化学染色により、インフルエンザウイルス感染マウスの気道組織においてウイルス感染細胞での電位依存性カルシウムチャネル発現を確認することができた。以上から、電位依存性カルシウムチャネルを標的とした治療が有効であることが示された。また、電位依存性カルシウムチャネルとインフルエンザHAの相互作用様式も詳細に解析したため、その知見に基づいてそれらの結合を阻害する少分子化合物スクリーニング系の基盤構築を行っている。さらに、蛍光免疫染色法を用いて1細胞あたりの電位依存性カルシウムチャネルの発現量とウイルス感染の関係を検証したところ、両者が正の相関を示したことが明らかとなった。以上から、現在までの進捗状況としては、おおむね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までにインフルエンザウイルスのHAと電位依存性カルシウムチャネルのシアル酸を介した結合様式を詳細に明らかにしている。また、電位依存性カルシウムチャネルのシアル酸以外にもHA結合部位が存在する予備的データも得られている。本年度は、さらに詳細な結合様式を検証する。 H1N1以外の様々な亜型のインフルエンザウイルスHAが電位依存性カルシウムチャネルと結合することを示す予備的データも得られている。そこで、本年度はそれら相互作用の再現性が確認された亜型のウイルスを用いて、ex vivoおよびin vivoでの感染実験を行い、電位依存性カルシウムチャネルを標的とした治療が亜型によらず広く感染抑制効果を有するか検証する。 インフルエンザHAと電位依存性カルシウムチャネルの相互作用を可視化する系を構築する。構築した系を用いて、HAとカルシウムチャネルの結合を阻害する少分子化合物のスクリーニングを行う。同時に、カルシウムブロッカーのうち一種類がHAとの相互作用を阻害する予備的データも得られているので、この薬剤がHAと電位依存性カルシウムチャネルの相互作用を阻害するメカニズムを明らかにする。さらに、この薬剤をリード化合物としてカルシウムチャネルの活性は抑えずに、HAとの相互作用のみを抑制する化合物の探索も行う予定である。 さらに、電位依存性カルシウムチャネルの発現量がウイルス感染と正の相関を示したことから、オプトジェネティクスによりカルシウムチャネル発現量を厳密に制御したうえでウイルス感染を評価する。以上により、カルシウムチャネルが真にインフルエンザウイルス感染に鍵となる受容体タンパク質であるかどうか詳細に解析する予定である。
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[Journal Article] A peptide derived from phosphoinositide 3-kinase inhibits endocytosis and influenza virus infection2019
Author(s)
Yoichiro Fujioka, Aya O. Satoh, Kosui Horiuchi, Mari Fujioka, Kaori Tsutsumi, Junko Sasaki, Prabha Nepal, Sayaka Kashiwagi, Sarad Paudel, Shinya Nishide, Asuka Nanbo, Takehiko Sasaki, Yusuke Ohba
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Journal Title
Cell Structure and Function
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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