2017 Fiscal Year Annual Research Report
IV型線毛のライブイメージングによる機械的刺激応答機構の解明
Project/Area Number |
16H06230
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
中根 大介 学習院大学, 理学部, 助教 (40708997)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 微生物 / シアノバクテリア / IV型線毛 / Twitching motility / 走光性 / シグナル伝達 / 光学顕微鏡 / ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
自然環境下ではバクテリアは浮遊状態と付着状態を高頻度に遷移している。海洋で生息するバクテリアを除くと,かなりのものが表面近くで生活をしており,液体と固体の境界での生存戦略を発達させている。その1つに,IV型線毛と呼ばれる接着に有利にはたらく繊維状構造がある。これは,接着と運動を担う構造物であると見なされており,1-5 μmの長さの繊維構造が伸長・接着・収縮という一連のサイクルを繰り返すことで,細胞は固体表面上を動くことができる。IV型線毛は幅広いバクテリアで見つかっており,緑膿菌や淋菌では病原性発揮に重要であることが示されている。これまでIV型線毛は光学顕微鏡下で見えないことが当たり前であった。線毛繊維の細さが8 nmしかないこと,その動きは毎秒 1 μmに達する素早い動きであることからも,このアプローチが容易ではないことが 想像がつく。最も難しい問題は,IV型線毛を直接蛍光標識する手法が確立していない点である。申請者は,IV型線毛からなる繊維構造を, 光学顕微鏡下でダイレクトに可視化する実験系を構築した。当該年度では、シアノバクテリアのモデル生物である Synecosystis sp. PCC6803 を用いて,IV型線毛の動的な制御機構について明らかにした。つまり,外部環境の入力シグナルとして方向性のある光を照射し,細胞は光受容体を介して光の向きを認識し,IV型線毛を光軸に沿って非対称に活性化することで,一方向的な運動を達成する,という一連のプロセスを画像化することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
シアノバクテリアのIV型線毛に関しては,光学顕微鏡下でのイメージング法を最適化し,一連の制御過程を可視化することに成功した。当初の目的の1つは達成しており,その内容は論文としてまとめて,米国科学アカデミー紀要誌に掲載された。IV型線毛の多様性や,その制御メカニズムという観点からもインパクトを与えることができたのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,シアノバクテリアだけでなく,他種のIV型線毛や,IV型線毛と進化的に同じ起源であると予測されている運動・分泌装置にも注目して,その制御メカニズムの普遍性を議論する。また,シアノバクテリアに関しては,ライブイメージングを展開させることで,接着・形状変化・収縮するという一連の動態をマイクロ・ナノスケールで詳細に画像化・定量化する。
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