2017 Fiscal Year Annual Research Report
褐色脂肪由来物質を介した心筋代謝リモデリング機構の解明
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16H06244
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
清水 逸平 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任准教授 (60444056)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 褐色脂肪 / 心不全 / コリン |
Outline of Annual Research Achievements |
心不全モデルマウスの、褐色脂肪をはじめとする主要代謝臓器や血液サンプルを用いてメタボローム解析、プロテオミクス解析、DNAマイクロアレイを行い、バイオインフォマティクスの手法を用いて全身の恒常性を制御しうる褐色脂肪由来物質を探索した結果、コリンおよび酸化型コリンが心不全モデルマウスの血液中で上昇することがわかった。コリンは機能不全に陥った褐色脂肪に由来すると考えられ、酸化型コリンに変換されることで心臓の代謝的リモデリングが生じることがわかっている。 平成29年度は以下の課題に取り組んだ。1)心筋代謝リモデリングを増悪する褐色脂肪由来代謝物質変換酵素の同定; バイオインフォマティクスの手法を用いて行った検討の結果、コリンを酸化型コリンに置換する酵素(Choline oxidizing enzyme(COE))の候補が複数見つかり、siRNAを用いた検討の結果、現在一つの酵素がCOEとして重要である可能性が強く示唆された。そのため全身COEノックアウトマウスに加え、Floxedマウスを開発し、検討を行うこととした。平成29年度中にいずれのマウスも作製が完了し、今後表現型の解析を行うところである。2)酸化型コリンによる心筋代謝リモデリング機構の解明; 酸化型コリンをマウスに全身投与し、心臓を用いてメタボローム解析を行った結果、ATPとリン酸化クレアチンレベルが著明に低下し、Seahorseを用いた検討の結果、心臓のミトコンドリアで酸素消費量が低下することがわかった。現在詳細なメカニズムを検討しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイオインフォマティクスの手法を用いて行った検討の結果、コリンを酸化型コリンに置換する酵素(Choline oxidizing enzyme(COE))の候補が複数見つかり、siRNAを用いた検討の結果、現在一つの酵素がCOEとして重要である可能性が強く示唆された。そのため全身COEノックアウトマウスに加え、Floxedマウスを開発し、検討を行うこととした。予備的検討の結果、全身COEノックアウトマウスにおいて左室圧負荷モデルを作製したところ、心機能が改善することがわかり、現在再現性を確認しているところである。 また、酸化型コリンをマウスに全身投与し、心臓を用いてメタボローム解析を行った結果、ATPとリン酸化クレアチンレベルが著明に低下することがわかっていたが、Seahorseを用いた検討の結果、心臓のミトコンドリアで酸素消費量が低下することがわかった。現在共同研究者にプロテオミクス解析を依頼し、詳細なメカニズムを検討しているところである。このように進捗状況はおおむね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
心不全モデルマウスの、褐色脂肪をはじめとする主要代謝臓器や血液サンプルを用いてメタボローム解析、プロテオミクス解析、DNAマイクロアレイを行い、バイオインフォマティクスの手法を用いて全身の恒常性を制御しうる褐色脂肪由来物質(代謝物質、褐色アディポカインなど)を探索した結果、コリンおよび酸化型コリンが心不全モデルマウスの血液中で上昇することがわかった。コリンは機能不全に陥った褐色脂肪に由来すると考えられ、酸化型コリンに変換されることで心臓の代謝的リモデリングが生じることがわかっている。平成30年度は以下の課題に取り組む。1)酸化型コリン産生酵素の同定、及びノックアウトモデルマウスの表現型解析;コリン→酸化型コリンという反応に、コリン酸化酵素(COE)が関与している可能性が示唆されている。全身COEノックアウトモデルは作製が完了しており、このマウスに左室圧負荷モデルマウスを作製して表現型の解析を行う。2)酸化型コリンが心筋代謝リモデリングを惹起するメカニズムの解明;ポンプを用いてマウスに酸化型コリンを持続投与すると、心臓のリン酸化クレアチンやATPのレベルが劇的に低下することがメタボローム解析の結果明らかになっている。プロテオミクスの手法を用いて、詳細なメカニズムに迫る。現在電子伝達系の構成タンパクに着目しているが、ラット由来培養心筋細胞で同分子をノックダウンしたのちに、細胞外フラックスアナライザーやメタボローム解析を行い細胞代謝の変容が生じるか検討を行う。3)褐色脂肪におけるコリン代謝の意義の検討;メタボロームフラックス解析を行い、コリンがどのような代謝経路をたどって代謝されるか検討することで、褐色脂肪細胞におけるコリン代謝の意義について検討する。
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