2017 Fiscal Year Annual Research Report
Exhaustion関連分子による白血病幹細胞制御機構の解明
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16H06250
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菊繁 吉謙 九州大学, 大学病院, 助教 (40619706)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 白血病幹細胞 / TIM-3分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は癌幹細胞を標的とした治療モデルを白血病において確立するべく、世界に先駆けて白血病幹細胞特異的表面抗原TIM-3を同定し、その機能の解明に取り組んできた。TIM-3は白血病幹細胞特異的表面抗原であると同時に、近年注目をあつめているT細胞exhaustion関連分子としてPD-1とともにT細胞免疫を負に制御するシグナル分子であることが知られている。 本研究ではTIM-3をはじめとするT細胞exhaustion関連分子群が白血病幹細胞の機能制御を行うという非常にユニークな分子機構の解明を目的とする。平成29年度は急性骨髄性白血病症例におけるTIM-3シグナルの詳細の解明を中心に取り組んだ。その結果、TIM-3 ligandであるgalectin-9の細胞外ドメイン結合後に、ある特定のSrc family kinaseがTIM-3分子の細胞質内ドメインに結合することでcanonical Wnt pathwayの活性化を生じることを見出した。さらにこのシグナルはWnt lignad非存在下で白血病幹細胞特異的に生じることを確認した。すなわち、このTIM-3シグナルは白血病幹細胞特異的な新規canonical Wnt pathway活性化機構であることを見出した。T細胞において抑制性シグナルであるexhaustion関連分子が白血病幹細胞においては全く異なる機構によって、腫瘍促進的に作用することを見出し、その具体的な分子機構について明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28-29年度にある程度の症例数の急性骨髄性白血病幹細胞分画のexhaustion関連分子の発現について、解析を終了しています。また、研究対象の一つであるTIM-3下流シグナルに関しては下流のSH2結合ドメインに結合するSrc family kinaseもすでに同定を完了しており、概ね順調に進展していると考えます。平成30年度はTIM-3以外のexhaustion関連分子のシグナルに関しても平成29年度の結果を踏まえて研究を遂行する予定としています。さらに平成30年度は腫瘍細胞とT細胞におけるTIM-3シグナルの違いに関して、平成29年度中に得られたデータをもとにして、シグナル下流のエフェクター分子の差に着目して解析を進める予定としています。以上の経過から予定していた本研究課題については概ね順調に進展していると考えられます。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ヒト白血病幹細胞におけるTIM-3をはじめとするT細胞exhaustion関連分子の発現解析を昨年度に引き続き症例数を増やして行う。
(2)(1)でT細胞exhaustion関連分子の発現制御機構について解明を行うとともに、昨年度に引き続き、xenograftモデルを用いたexhaustion分子の発現の有無に伴う幹細胞活性の差について解明を継続する。
(3)平成28-29年度の研究の結果、TIM-3シグナルが直接的にcanonical Wnt signalingを活性化することを見出し、白血病幹細胞における具体的なシグナル関連分子群も同定をほぼ完了した。そこで平成30年度はこれらのシグナルが同じTIM-3分子を発現するexhausted T cellとどのように異なるのかについて詳細に検討を行う。具体的には、平成29年度に同定した白血病幹細胞においてTIM-3シグナルを伝達するSrc family kinaseは白血病幹細胞に特異的に発現する分子であり、T細胞において発現するSrc family kinasesとは大きく異なっている点に着目して、そのシグナルの差について検討を行う。
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