2016 Fiscal Year Annual Research Report
脳表留置型ハイブリッド電極によるメゾスコピック脳活動解析
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16H06260
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
國井 尚人 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80713940)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 単一ニューロン活動 / 皮質脳波 / てんかん / 復号化 / brain-machine interface |
Outline of Annual Research Achievements |
我々が開発したハイブリッド電極のプロトタイプは、 3 極の硬膜下電極の周囲に 6 本の微小電極を配置したものである。まず、微小電極の長さを1.5mmと2.5mmに固定したもの(ハイブリッド電極第1世代)をヒト腹側感覚運動野に留置した症例を本年度までに10症例蓄積することができた。また、硬膜下電極の個数と微小電極の本数/長さを増加させたハイブリッド電極第2世代・第3世代を留置した症例を計2例、追加することができた。 上記症例のうち少なくとも2名において、てんかん性脳波異常をハイブリッド型電極にて安定して計測されていることが確認できた。単一ニューロン活動および皮質脳波活動の挙動に関して解析を進めている段階である。 また上記症例のうち、ヒト発声時の神経活動を計測しえた症例(顔面運動野に電極が留置され、発声に関連した単一ニューロン活動・皮質脳波活動を安定して計測しえた症例)において、発声した文字の復号化を試みた。第一世代電極を用いた解析結果に関しては途中経過を下記学会(2016年日本神経科学大会、2016年Society for Neuroscience、2016年 Human Single Unit Meeting)にて、第二世代電極を用いた解析結果の途中経過に関しては下記学会(第3回 脳神経外科BMI懇話会)にて発表している。 復号化アルゴリズムを最適化することにより、第一世代電極を使用した全症例において、単一ニューロン活動と皮質脳波活動を組合せることで復号化精度が有意に改善した。またその復号化精度は全症例でsignificance levelを超えており、単一モダリティを用いた既存報告(Brumberg 2011, Pei 2011)に比して遜色ないものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
難治性てんかんに対して外科治療が検討される患者が頭蓋内電極留置術の適応となっており、本年度は6症例に頭蓋内電極留置術を施行した。その中で、てんかん発作焦点とハイブリッド電極留置部位の位置関係は症例によってばらつきがあった。すなわち、発作焦点および病的なてんかん性ネットワークに必ずしもハイブリッド電極留置部位が含まれていない症例もあった。一方、ハイブリッド電極留置部位は、多くの症例で顔面運動野近傍の外側皮質に位置しており、発声という認知課題を均一に測定するのに適していた。そのため、本年度はまずは認知課題施行時における単一ニューロン活動・皮質脳波活動の同時記録と復号化に注力した。 以上、てんかん性脳波異常に関する解析においては解析をさらに進める必要があるが、単一ニューロン活動・皮質脳波活動を用いた復号化精度の向上に関しては計画通りに進行していると考える。なお第一世代ハイブリッド電極の解析結果を踏まえ、電極密度や刺入電極の長さを改良した第二世代・第三世代ハイブリッド電極を作成し、安全に留置することにも成功しており、最適な電極構成を目指す途中段階としても、計画通りに進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のデータ量は、頭蓋内電極留置が必要な難治性てんかんを有する患者の数に依存するため、引き続き高いレベルのてんかん診療を維持し、計測データの蓄積を推進する。同時に、電極留置期間中の計測時間は限られているため、特に復号化精度を検証するための計測についてより効率のよい時間配分、課題選定を行っていく。 てんかん性脳波異常に関しては、引き続き蓄積された症例の解析に注力する。発作時の脳波異常と同期した単一ニューロンの活動を抽出する作業を進める一方で、十分なデータ量が得られない場合には、発作間欠期の脳波異常と単一ニューロン活動の関係についての解析を進める。また、単一ニューロン活動と皮質脳波を用いた復号化精度の検証に関しては、改良したハイブリッド電極による計測を更に蓄積し、改良された電極に最適な特徴量選定やアルゴリズムの構築を行い、将来的なOnline decodingに向けての応用を視野に入れて解析を進める。電極密度や刺入電極の深度など、電極構成の最適化は常に行ってゆく。
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