2017 Fiscal Year Annual Research Report
脳表留置型ハイブリッド電極によるメゾスコピック脳活動解析
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16H06260
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
國井 尚人 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80713940)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 単一ニューロン活動 / 皮質脳波 / てんかん / 復号化 / brain-machine interface |
Outline of Annual Research Achievements |
病的・生理的な大脳皮質の神経活動について、微視的な挙動と巨視的な挙動を関連づけて解き明かすべく、下記3つの目的を掲げて研究を進めている。 ①てんかん性異常時の単一ニューロン活動と皮質脳波の時系列パターンを記述する。②単一ニューロン活動に皮質脳波の情報を加えることにより復号化精度が改善するかを調べる。③ハイブリッド電極を構成する微小電極と硬膜下電極の配置の最適化を図る。 ①ハイブリッド電極を用いて、てんかん発作時の脳活動を少なくとも4例で捉えることに成功した。先行研究が示すように、同一のてんかん発作であっても個々の神経活動は発火頻度が上昇するもの、変化しないもの、低下するものがあることが確認された。てんかん発作時のネットワーク的検討を行うために更なる症例の蓄積を継続する。 ②プロトタイプのハイブリッド電極で計測した6例分のデータを解析した。同一部位の単一ニューロンの発火頻度、局所電場電位(LFP)の律動活動、皮質脳波の律動活動を組み合わせて、発声した母音の復号化を行った結果、チャンスレベルを有意に上回る58.6%の復号化精度を達成し、すべての症例で単一の信号より復号化精度が改善することを示した。2つの信号の組み合わせでは、単一ニューロン活動と皮質脳波の組み合わせが最も有効に復号化精度を改善した。 ③復号化の解析において、単一ニューロンを用いた復号化精度は、分離した単一ニューロンの数に依存することが示された。これらを踏まえて、第2世代、第3世代のハイブリッド電極を開発し、それぞれ3例、4例ずつ計測を行った。このように微小電極とマクロ電極の構成を変えつつ同じプロトコールで計測を行った報告は過去になく、最適な電極構成について有用な解析結果が得られることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、てんかん性異常に関する解析に比して、生理的脳活動の復号化に関する解析が先行しているが、そもそも未確定なてんかん焦点に対する電極の相対的位置関係にばらつきが生じること、記録中に発作が捕捉されるかどうかは臨床的制約も大きく受けることは織り込み済みの計画であり、十分な計測期間を設けて症例を蓄積した上でのデータ解析が重要と考えており、その間に復号化の研究が順調に進行していることは、研究計画全体として順調な進展と考える。症例のリクルートは、臨床的制約を受けつつも順調に進んでおり、7例において2種類の異なる構成のハイブリッド電極で計測を行うことができた。復号化に最適な電極構成を明らかにすることはBMIへの応用を考えるうえで重要なステップであり、この点でも順調に推移していると考えている。また、すべての電極留置に関して有害事象の発生はなく、ハイブリッド電極の安全性を示すデータとしても順調に蓄積されていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のデータ量は、頭蓋内電極留置が必要な難治性てんかんを有する患者の数に依存するため、引き続き高いレベルのてんかん診療を維持し、計測データの蓄積を推進する。 てんかん性脳波異常に関しては、蓄積された発作時データの解析を重点的に行う。特にハイブリッド電極で同一部位から計測した単一ニューロン活動とLFP、皮質脳波の解析を行いメゾスコピックレベルまでの挙動を明らかにするとともに、広範囲に留置したconventionalな硬膜下電極で計測した巨視的脳活動との関係を調べることでネットワークとしてのてんかん発作の機序解明を目指す。同時に、発作間欠期の脳波異常と単一ニューロン活動の関係についての解析を進める。また、単一ニューロン活動と皮質脳波を用いた復号化については、第4世代の電極開発、最適な特徴量選定やアルゴリズムの改良を行い、より高い復号化精度を目指す。一方で、Online decodingのシステム構築を進める。本年度の成果で、単一ニューロン活動と皮質脳波が復号化プロセスを補い合う可能性が示された。すなわち、単一ニューロンを用いた高い復号化精度と皮質脳波の安定性を生かすためには、online decodingに基づいたdecoded neurofeedbackの導入が有用と考えられた。これに向けての系の確立を進める。
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Research Products
(4 results)