2016 Fiscal Year Annual Research Report
Stochastic Analysis on Infinite Particle Systems
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16H06338
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長田 博文 九州大学, 数理学研究院, 教授 (20177207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
種村 秀紀 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (40217162)
舟木 直久 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (60112174)
香取 眞理 中央大学, 理工学部, 教授 (60202016)
白井 朋之 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (70302932)
笹本 智弘 東京工業大学, 理工学研究科, 助手 (70332640)
熊谷 隆 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (90234509)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | 無限粒子系 / 確率解析 / ランダム行列 / 可解モデル / 確率幾何 |
Outline of Annual Research Achievements |
長田はA.I. Bufetov、A.V. Dymovとともに、1次元の無限粒子系において行列式測度を定義する作用素が射影作用素の場合に、対数微分を計算した。これで対数微分の表示式における1点相関関数の役割が明確になった。ランダム行列の力学的普遍性に関しては、長田と河本がGUEの場合に、漸近挙動を考える際のマクロな位置をずらしても、極限の確率微分方程式は変化しないということを証明した。この結果は、ランダム行列の力学的普遍性において最も簡明かつ典型的な例である。 香取は、Bessel過程とDyson模型を,それぞれドリフト項と相互作用項がJacobiのテータ関数の対数微分で与えられる形に拡張し,楕円Bessel 過程及び楕円Dyson模型と名付けた。これらのKolmogorov方程式が時間に依存したポテンシャルをもつSchroedinger型の方程式に変換できることに対応して,両者が Brown運動の時間に依存したGirsanov変換であることを示した。特別なパラメータの場合,これらは終時刻でpinnedされた確率過程で表されることを示した。特別なパラメータでは楕円Dyson模型は行列式マルチンゲール表現をもち,行列式過程となることを証明した。 白井はBufetovとともに、再生核ヒルベルト空間の一つであるde Branges 空間に付随する行列式点過程を定義して,剛性と絶対連続性/特異性に関する dichotomy を証明した.熊谷は一般の距離付き測度空間における飛躍型確率過程に関する楕円型ハルナック不等式及び放物型ハルナック不等式の同値条件を研究し、これらの不等式の安定性を証明した。笹本は1次元単純排他過程における着目粒子の位置に関する大偏差関数の明示公式を与えた。 ポスドクの江崎は、長距離相互作用を持つ格子上の無限粒子系に対して本研究課題の理論を適用して確率力学を構成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ランダム行列の不変原理という方向の研究に関して、その第一歩となる成果が得られ論文としてまとめた。この結果は、その後、著しく進展している。実際、力学的普遍性を証明するために、モスコ収束を用いるという新しいアイデアを発見したため、きわめて満足のいく形まで発展している段階である。この研究の一つの重要性は、確率力学的普遍性を証明するためには、極限の無限次元確率微分方程式の解の一意性と、有限粒子系の平衡分布の無限粒子系の平衡分布への収束を考える際に、相関関数の局所一様収束があれば充分であるということを示した点である。今盛んに研究されている、ランダム行列の(静的)普遍性は、相関関数の弱収束を示すものだが、相関関数の弱収束を「強収束」まで強めると力学的にも収束することを示している。ランダム行列の普遍性自体にも、新たな研究テーマ、問題意識を与えるものである。 格子気体・ジャンプ型確率力学に関して、ポスドク研究員が出発点となる成果を出した。 対称性のある無限次元確率微分方程式は、無限個の両立性を持つ有限次元確率微分方程式と等価であり、平衡分布の末尾事象の解析で無限次元確率微分方程式の強解の存在や一意性が従う、という本研究の指導原理が、幾つかの解説論文を書くうちに一層明確になってきた。以上のことから、非平衡解の存在・確率力学に関する空間のエルゴード分解など、有限次元の古典論を無限粒子系という無限次元確率力学に持ち上げるという目標に向けて本研究は、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
対称性のある無限次元確率微分方程式の新理論に関しては、マリアヴァン解析や空間のエルゴード分解などを目標に、一層研究を進めたい。ある種の「超関数論」を構想している。これが、上述の目標を達成するための鍵になる予定である。
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Research Products
(82 results)