2018 Fiscal Year Annual Research Report
Stochastic Analysis on Infinite Particle Systems
Project/Area Number |
16H06338
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長田 博文 九州大学, 数理学研究院, 教授 (20177207)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
種村 秀紀 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (40217162)
舟木 直久 早稲田大学, 理工学術院, 特任教授 (60112174)
香取 眞理 中央大学, 理工学部, 教授 (60202016)
白井 朋之 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (70302932)
笹本 智弘 東京工業大学, 理学院, 教授 (70332640)
熊谷 隆 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (90234509)
|
Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
|
Keywords | 無限粒子系 / 確率解析 / ランダム行列 / 可解モデル / 確率幾何 |
Outline of Annual Research Achievements |
長田博文は,IFC条件について,従来よりも一般的な十分条件を与えた.種村秀紀は,長距離相互作用をもつ無限個の剛体球の系をスコロホッド型確率微分方程式で表し,強解の一意性を研究し,また理論を飛躍型無限次元確率微分方程式への一般化した。 白井朋之は,2次元球面上にランダム行列やラプラス・ベルトラミ作用素のスペクトルに由来する2種類の行列式点過程を考察し,そのスケール極限で Ginibre 点過程や一般化されたPaley-Wiener空間に付随する行列式点過程を導出した. 舟木直久は相互作用粒子系から平均曲率運動,Stefan 自由境界問題,多成分KPZ方程式などを導出した.熊谷隆は長距離の飛躍を許すランダム媒質上のランダムウォークの漸近挙動を解析した.飛躍の確率が安定過程型で,その係数がランダムでランダムコンダクタンスについて,係数に弱い可積分条件を置くことで,対応するランダムウォークのスケール極限が安定過程になることを証明し,熱核の精密評価を導出した. 香取眞理はアフィンルート系に付随するマクドナルド分母公式に着目し,行列式過程の楕円関数拡張を行った.2次元上の行列式点過程も構成し、それらの無限粒子極限としてジニブル過程とその2つの変形版を導いた.また,1成分プラズマ模型や2次元ガウス自由場との関連を議論した.笹本智弘は1次元KPZ普遍性クラスに属する多くのモデルを特別もしくは極限的な場合として含む確率的6頂点模型の定常状態の性質を明らかにした.定常状態を具体的に構成し,高さ関数の母関数を行列式を用いて表した.また1次元XXスピン鎖と呼ばれる量子スピン系のカレント揺らぎを,ランダム行列理論にも現れるBessel核を用いて記述した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
長田博文は種村秀紀,河本陽介とともに,無限次元確率微分方程式を解くための本研究の主理論において,もっとも重要な仮定であった,IFC条件について研究した.この条件は,無限次元確率微分方程式を,無限個の両立性を持つ有限次元確率微分方程式のスキームと捉えなおす,というこの理論の根幹部分を実行するための必須の条件である.従来は,準正測Dirichlet形式に付随する解に対してだけIFC条件が証明されていたが,この制約を外した.この効果は非常に大きく,本理論の様々な応用につながっている.例えば,IFC条件の下で成立する無限次元確率微分方程式の弱解の一意性定理は,付随する準正測とは限らないDirichlet形式の一意性を生み出す.この一意性は,それ自身がDirichlet形式論における拡張問題に答えを与えるだけでなく,極限定理への応用があり,ランダム行列の力学的普遍性を示す上で鍵となる役割を果たす.最後の結果は,対称性という制約はあるものの,無限次元の収束定理を,モデルの個別な様相によらず,幾何的対象である点過程の相関関数の局所一様収束というロバストな条件に帰着するという結果である. 香取眞理と白井朋之はランダムな解析関数の零点分布について共同研究を行っている.先行研究としてPeres と Virag が,円盤上のガウス型解析関数の零点が行列式点過程 (DPP) であることを証明している.彼らは各係数が独立な複素正規分布に従うテイラー級数の統計集団を考え,共形変換不変なDPPを得ることに成功している.香取と白井は,彼らの研究の拡張として,円環上で各係数が独立な複素正規分布に従うローラン級数の統計集団を考え,その零点が実現する点過程の特徴づけを行っている.
|
Strategy for Future Research Activity |
無限粒子系において,系全体のマクロな様相についての何らかの構造を仮定することは避け難いことである.一方,非平衡,非可逆な確率力学の研究は困難だが,興味深い.本研究の中の解析的側面は,様々な状況を扱うロバストな理論だが,明示的に与えられ各点(一つの無限粒子系)から出発する確率力学を解析するという意味での非平衡問題についてはまだ十分に発展していない.一方,このチームの中で可解モデルの立場から進展する研究は,そういう非平衡を扱いうるが,適用範囲が特別なものになる.これらの研究の方向性を統合する方向に研究を進めたい.確率解析の立場からは,これは,より非対称なモデル,範疇を扱う必要が出てくるが,研究全体を,この方向をより強く意識して構築していきたい.IFC条件という基本的な条件を,準正則対称Dirichlet形式の理論なしに,現在展開している.Dirichlet形式論の協力な道具であるcapacityを使用せずに確率解析だけで,粒子の挙動をする方向をより突き詰めていきたい.
|
Research Products
(83 results)