2017 Fiscal Year Annual Research Report
Precise determination of the proton charge radius by electron scattering off proton at ultra-low momentum transfer
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16H06340
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
須田 利美 東北大学, 電子光理学研究センター, 教授 (30202138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚田 暁 東北大学, 電子光理学研究センター, 助教 (10422073)
菊永 英寿 東北大学, 電子光理学研究センター, 准教授 (00435645)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | 陽子電荷半径 / 電子弾性性散乱 / 極低運動量移行 / 電荷形状因子 / 低エネルギー散乱電子スペクトロメータ |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、本基盤研究Sの大変低い充足率、65%(7000万円減額)、という状況で計画全体の見直し後に2016年度内に決定した研究推進方針に従い、以下の研究を実施した。なお、研究費の一部を2018年度に繰り越し2017年度分の研究を実施した。 1)新しい電子ビーム輸送系の設計と建設、設置 2)散乱電子スペクトロメータの設計 3)焦点面検出器の検討 1)は、東北大学電子光理学研究センターの低エネルギー(60 MeV)電子直線加速器からのビームを利用し、第一実験室と呼ぶ地下実験室で電子・陽子弾性散乱実験を遂行可能にするための新しい電子ビーム輸送系である。当該研究遂行に必要なビームエネルギー、20-60 MeV、を散乱実験標的まで真空環境中を輸送することが目的である。必要な精度の測定を可能にするため、ビームの運動量広がりは 10**-3 以下、標的上でのビームスポットサイズは 1mm 以下となるよう設計した。2)は散乱電子の運動量と散乱角度を正確に測定し、必要な精度で電子・陽子弾性散乱の断面積絶対値を決定するための測定器である。そのために運動量分解能、 10**-3 以下、角度分解能、5 mrad 以下、且つ低エネルギー散乱電子検出のため検出器までの経路上を全て真空に保った状態で様々な散乱角度での測定を可能にするための角度変更機構の発明を含む真空チェンバーの検討を進めた。そして、これらの性能を満たす電磁石スペクトロメータの設計を終了し、また新しいビームラインは実験室に設置した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
低充足率が原因の予算不足のため、採択通知後ほぼ1年間研究計画そのものの再検討や電磁石や電源、真空ポンプ等々の中古品活用の可能性の検討、また予算不足の解消に向けた度重なる大学当局への交渉等に費やした。したがって、予定の研究計画と比較するとほぼ1年遅れで進行している。「研究実績の概要」でも述べたが、予算不足を補う様々な努力や決断を行い研究の遅れを取り戻すべく、新しいビームラインの設計や建設、設置、電磁石スペクトロメータの設計を進めてきた。ビームラインで使用される偏向電磁石には必要な運動量分解能を確保するため良質の鉄材である純鉄を使用するが、調達に長期間、6ヶ月、かかることが判明し年度内には建設が完了しないことになってしまった。年度をまたいだ予算執行ができない補助金という理由により年度内発注が不可能となり、さらに半年以上建設を止めて新年度発注とせざるを得なかった。低充足率と年度単位予算という全くの外的な理由で、研究競争が激しい中で1年半以上研究が止まった。 しかしながら、研究分担者を始め多くの研究協力者の努力により、当初の計画からはやく10ヶ月程度の遅れまで挽回してきている。2019年中には設置した新ビーム輸送系ならびにスペクトロメータの性能評価試験を開始し、可能な限り早く電子・陽子弾性散乱研究を開始したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
基盤研究Sの低充足率のために、新ビームラインの一部は仕様の違う電磁石や電源、また断面積絶対値測定に必須である2台目スペクトロメータは断念するなど、本来の研究目的を実現することが不可能な状況で研究を進めている。しかしながら、史上最低エネルギーでの電子散乱測定自体にも陽子半径決定研究には大きな意義があるために、世界を相手にした競争での優位性を維持した状態で研究を進めてゆく。 すでにビーム輸送系は完成し、2018年度末(本実績報告書は繰越分による研究結果も含め2019年度初頭に準備している)にはスペクトロメータも実験室に設置され、今後立ち上げ調整並びに性能評価テストなどを経て、陽子半径決定に向けた測定を開始する予定である。 しかしながら、散乱断面積の絶対値測定は、信頼性の高い陽子半径の決定には必須であり、この状態のままでは後から我々を追いかけてくる海外の研究施設、具体的にはドイツマインツ大の MESAなど、に対する優位性を維持することは絶望的なので、今後もあらゆる機会を通じて、予算の不足を補う努力をし2台目のスペクトロメータの建設や仕様にあう電磁石や電源の調達ができるよう努力してゆく予定である。
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Research Products
(13 results)