2016 Fiscal Year Annual Research Report
Fabrication and characterization of novel nano-materials using one- and two-dimentional reaction fields
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16H06350
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
篠原 久典 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (50132725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北浦 良 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (50394903)
大町 遼 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 助教 (60711497)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / ピーポッド / グラフェンナノリボン / 電子顕微鏡 / ラーマン分光 / 高温熱処理 / ジブロモビアントリレン |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は研究計画に示したように、極小幅グラフェンナノリボン(GNR)の創製とその評価を目指す。極小幅GNRは理論的な予想では通常の数十nm幅の GNR のバンドギャップ (10 ~ 20 meV)より大きなバンドギャップ (0.1 ~ 0.5 eV) をもつことが予想されている。このため、極小幅GNRは半導体CNTと同様に、薄膜トランジスター (TFT) へのチャネルとして極めて有用なナノカーボンであるが、現在まで多くの困難があり未だ実現していない。本研究では、CNTの1次元内部空間で極小幅GNRを創製するという、本研究グループが培った技術と経験を総動員してこれを実現する。 本実験では、ジブロモビアントリレンを原料にグラフェンナノリボンの合成を行った。評価・測定手法としてTEMとCS-TEMでGNRの内包状態の確認、共鳴ラマン分光測定で内包物の同定を行った。200 °C, 300 °C, 400 °C, 500 °Cの反応温度で内包・重合を行なった。共鳴ラマン分光の結果から、300 °C以上の条件では新たなピークが出現した。これらの新たなピークは同じ構造のGNRのラマンスペクトルの計算結果(396 cm-1, 1220 cm-1, 1260 cm-1, 1341 cm-1のピーク)と極めてよく一致している。特に、計算結果の396 cm-1のピークはRBLM(Radial Breathing Like Mode)と呼ばれ、GNRの幅に大きく依存する。このことから、N = 7, アームチェア型GNRが選択的に合成できた。 反応温度についてはCNTの種類によって若干の差異はあるが概ね300 °C以上で反応が起こる。CNTの直径については1.2 nm ~ 1.5 nm程度が最も適していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
極小幅グラフェンナノリボン(GNR)の創製では、今までにない極小幅GNRの合成に成功した。既に報告されている、超高真空中の金属清浄表面上でのGNRの合成の結果、及び理論計算の結果と比較すると、本研究でカーボンナノチューブ(CNT)内部に合成されたGNRは2nm以下の幅をもつ極小幅GNRであることが解明された。現在はこのGNRをCNT内部から抽出することを試みている。 また、当初の計画にはなかったが、CNT内部で長尺のチオフェンポリマー(ポリチオフェン)の合成にも成功した。200 °Cの条件では、2T-Br2, 3T-Br2で1450 cm-1付近にポリチオフェン由来のピークが確認できた。TEM観察とエネルギー分散型X線分析(EDX)の結果を示す。250 °Cのサンプルでは、45本のCNTを観察して1次元の内包物が観察できたが24本であった。内包率は53 %である。250 °CのサンプルのEDX分析を行った結果、硫黄原子のピークが検出された。EDX分析の結果からも内包物がポリチオフェンであることを示唆している。 温度依存性については加熱時間が12時間の条件では、220 °Cの条件が最も適していた。低温の場合供給量不足で反応があまり起こらず、高温の場合では供給量過剰でCNT外部でも反応が進んでしまうためである。 CNT依存性については1.0 nm ~ 1.6 nm程度の直径を有するCNTが望ましい。細すぎるCNTでは内包ができず、太すぎるCNTでは内部空間が広く反応方向の制御が困難になるためである。結論として本手法の最も適した条件は、KHHPもしくはHiPCOを用いて質量比が1 : 1、反応温度220 °Cで12時間加熱した条件である。
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Strategy for Future Research Activity |
このように合成された極小幅GNRは、本グループによって最近発見された酸化剤による外層CNTの選択的分解反応によって、高効率で抽出することが可能であると考えられる 。このように得られた極小幅GNRは、ラマン分光、原子間力顕微鏡およびAC-TEMを用いてその幅、長さや原子レベルでの表面構造を決定する。その後、電子物性を詳細に評価する。 初年度では時間に余裕があれば、次年度以降に計画されているCNT中でのダイヤモンドナノワイヤやBNヘテロ単層ナノチューブのプレリミナリーな合成も順次開始する。
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Research Products
(21 results)