2019 Fiscal Year Annual Research Report
Fatigue crack propagation in steels
Project/Area Number |
16H06365
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
津崎 兼彰 九州大学, 工学研究院, 教授 (40179990)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 元道 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20722705)
福島 良博 九州大学, 工学研究院, 助教 (40156774)
野口 博司 九州大学, 工学研究院, 教授 (80164680)
濱田 繁 九州大学, 工学研究院, 准教授 (90432856)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | 疲労変形 / 疲労き裂進展 / ひずみ時効 / マルテンサイト変態 / 鉄鋼材料 / アルミ合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、出口を見据えた夢のある基礎研究領域として、部材の設計強度を決定する金属疲労に注目して、「疲労き裂研究の新領域」を拓くことを目的としています。そのために、研究代表者達が独自に見出した常識を破る現象である(1)アルミ合金での疲労限の出現と(2)鉄鋼での低サイクル疲労の長寿命化の二つを研究シーズとして、そのメカニズムを徹底解明します。その知見をもとに2018年度からの第二ステージでは、(a)高い疲労限を持つオーステナイト系ステンレス鋼や(b)水素環境下でも疲労特性が劣化しない鉄鋼など、従来常識を打ち破る新規の鉄鋼材料の創製を行います。その上で、原子拡散、マルテンサイト変態などによって起こる疲労き裂先端近傍での材質変化を積極的に取り込んだ新しい疲労き裂研究の学問体系の土台を築きます。2019年度の主な成果は以下の通りです。 ■応用研究:疲労特性に優れた新たな鉄鋼材料を創出する 「耐疲労鋼」については,ひずみ時効による疲労限上昇というシーズのロバスト性を向上させるために、フェライト鋼におけるMnの効果に研究を展開し、論文投稿を達成しました(2020年2月論文受理)。「耐水素鋼」については、原子結合性を考慮した合金成分選択を行い、高濃度水素環境でも水素脆化しない高強度材料、さらには水素によって強度と延性が向上する鉄鋼材料を見出しました。 ■基礎研究:材質変化を積極的に取り込んだ疲労き裂研究の新機軸を拓く 動的ひずみ時効による疲労強度の向上メカニズムについて、Mg過剰添加したAl6061の疲労き裂進展挙動を調査し、ひずみ時効誘起モードIき裂進展というメカニズムを提案しました。水素誘起き裂進展メカニズムについて、Fe-Si単結晶でのき裂周りのミクロ組織の詳細観察を行い、水素によってひずみ勾配と転位密度が変化する3つの領域が形成されることを明らかにしました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以下の5点を理由として挙げます。 ■ 耐疲労鋼での研究進展:プロジェクト1年目に見出した金属疲労に強い組織を持つTRIPマルエージング鋼のメカニズム解明を進めるとともに、応力助長型とひずみ誘起型でマルテンサイト変態が起こるFe18Cr8Ni-C合金を用いて引張強さが同じでも疲労限が大きく上昇することを2018年度に示しました。これにより第二ステージ応用研究における「耐疲労鋼」の当初目標を達成しました。2019年度は、炭素拡散とひずみ時効による疲労限上昇という独自シーズのロバスト性向上を検討するために、フェライト鋼におけるMnの効果に研究を新たに展開し、論文投稿を達成しました。 ■耐水素鋼での研究進展:水素拡散性の制御・利用という当初アイデアに加えて、本年度は原子結合性を考慮した合金成分選択を行い、高濃度水素環境でも水素脆化しない高強度材料、さらには水素によって強度と延性がともに向上する画期的な鉄鋼材料を見出すことができました。 ■ 活発な研究論文発表:昨年度の16報を上回るオリジナル論文・解説合計21報の活発な研究成果の公表を2019年度に行いました。 ■ 3回目のプレス発表:「疲労き裂研究の新機軸」研究のための基盤技術構築の一環として、応力下での転位運動のECCI-SEMによるその場観察を世界で初めて達成し、Scientific Reports誌に論文掲載しました(2020年2月)。この内容についてプレス発表しました。2017年3月、2018年10月、2020年2月と3回のプレス発表によって、研究成果の一般への広報を行うことができました。 ■ 研究対象材料の拡大:研究進捗評価でのコメントを受けて、アルミ合金での研究成果を公開するとともに、さらに、対象材料をチタン合金にも拡大展開するという最終年度に向けての意欲的準備を行いました。
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Strategy for Future Research Activity |
■ 基礎研究課題の推進:[1-1]疲労限の出現メカニズムの解明 これまで、モデル合金としてFe-Cフェライト合金を用いて、ひずみ時効によって疲労限が向上するメカニズム解明を行ってきた。しかし、2019年度に行われた研究進捗評価においてアルミ合金そのものでの実証とメカニズム解明を求められたため、前年度に引き続きアルミ合金でのメカニズム解明の研究を推進する。 ■ 基礎研究課題の展開:[2-4]チタン合金のDwell fatigueのメカニズム解明 基礎研究のさらなる展開としてチタン合金にまで対象材料を拡大する。チタン合金での長年の懸案課題である「応力保持による疲労き裂進展の促進(Dwell効果)」に着目し、そのメカニズム解明を新たな課題として追加し推進する。なお、この追加課題については、2019年度に十分な準備を行っている。 ■ 成果公開の促進と研究分野への貢献 最終年度であるので、これまでと同じように研究成果をしっかりと論文投稿に結び付ける。また昨年度に引き続き日本機械学会M&M材料力学カンファレンスにて「構造材料に生じる疲労・破壊の力学と材料学」のオーガナイズドシンポジウムを開催し、研究成果の公開とともに本分野の活性化に貢献する。
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Remarks |
2017年3月と2018年10月に引き続き、2020年2月に3回となるプレス発表を行いました。プレス発表の正式タイトルは「走査型電子顕微鏡法による広範囲での転位運動のその場観察に成功-金属材料の安全な使い方と将来の新材料開発に貢献-」です。プレス発表のもととなった研究成果の論文情報URLは以下の通りです。 https://doi.org/10.1038/s41598-020-59429-x
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Research Products
(59 results)