2016 Fiscal Year Annual Research Report
Evoking regenerative ability based on the priciple of regeneration
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16H06376
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
阿形 清和 学習院大学, 理学部, 教授 (70167831)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | 発生・分化 / 器官形成 / 再生 / エピゲノム / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
イモリは変態後も四肢再生能力を維持するのに対し、カエルは変態後に四肢再生能力を失いスパイク状の構造しか再生できない。これは再生の第一段階の<先端化>は行われるが、第二段階の<インターカレーション>が遂行されないためと考えられた。すなわちFGFシグナルは機能するものの、FGFシグナルとポジティブ・フィードバック・ループを作るためのShhシグナルが機能しないためと考えられた。本研究では、カエルを遺伝子操作することで変態後にもShhシグナルを活性化させて完全な四肢再生を惹起することに挑戦する。本年度においては、Shh遺伝子の四肢特異的エンハンサー(MFCS1)をイモリ2種、カエル2種とで詳細に配列比較するとともに、MFCS1から転写されるenhancer RNA(eRNA)を検出することに成功した。このeRNAが変態前のカエル再生芽で検出されたものの、変態後の再生芽では検出されなかった。これは、変態ホルモン(チロキシン)によって、eRNAの転写阻害が起きることに起因すると予測された。一方イモリでは、チロキン受容体の結合認識配列候補に隣接する形で、イモリにのみ保存されている配列(CCG配列と命名)を見出し、そのCCG配列がnon-coding RNAを転写するコンセンサス配列と類似していることから、イモリでは変態後においてもCCG配列からノックアウトeRNAが転写されることでShh遺伝子が転写される可能性が示唆された。そこで、イモリのCCG配列をCRISPR/Cas9でターゲットして潰したイモリを作成し、四肢再生に与える影響を検証した。現在までに何匹かが変態するまで発生したので、今後イモリの四肢再生能力がカエル化するかどうかの検定を楽しみに待っている状態である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Shh遺伝子の四肢特異的エンハンサー(MFCS1)をイモリ2種、カエル2種とで詳細に配列比較したところ、イモリにのみ保存されている2つの配列を見出した(CCG配列とCAT配列と命名)。この配列の違いがイモリとカエルとの四肢再生能力の違いを生んでいる可能性について本年度は検証を行った。また、イモリとカエルの四種において良く保存されている配列内に核内受容体RXR/RAR/TRの結合候補配列を見出すことに成功した。すなわち、Shh遺伝子がレチノイン酸で発現誘導されるのは、Shh遺伝子の上流にRXR/RAR結合サイトがあるわけではなく、Shh遺伝子の四肢特異的な保存配列MFCS1のeRNAの転写によって発現制御されている可能性が示唆された。また、変態ホルモンであるチロキシンはその受容体RXR/TRがRXR/RAR結合配列と競合することで、変態後に転写活性を失うことが示唆された。この発見によって、カエルの四肢発生過程では、レチノイン酸がeRNAの転写を介してShh遺伝子の転写を促進するのに対し、変態後はチロキンによってeRNAの転写が阻害されることでShh遺伝子のサイレンシングが起き、四肢再生のインターカレーションがうまく行かないことが予想された。また、イモリではRXR/RAR結合サイトの横にイモリ特異的なnon-coding RNAの転写制御配列(CCG配列)を獲得したことで、変態後にもeRNAが転写され続けて、Shh遺伝子の発現が維持されていることが示唆された。本年度において、それらの仮説を証明する第一弾として、イモリ特異的なCCG配列をCRISPR/Cas9で破壊することで、eRNAの転写が変態後に抑制を受けて再生能力を失うかどうかの検証を広島大学との共同研究を開始した。現在、ゲノム編集したイモリが変態するのを待っている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においては、イベリアトゲイモリを用いて、CRISPR/Cas9でCCG配列のみならずCAT配列についても、それぞれ、あるいは同時に破壊したイモリを作製して、四肢再生能力がカエル化するかの検証実験を行う。また、逆にカエルにCCG配列やCAT配列をCRISPR/Cas9で挿入して、カエルの四肢再能力がイモリ化するかを検証することに全力投球する予定である。そのために、学習院大学のプロジェクトスペースを借りて、イモリとカエルの専用の飼育施設とゲノム編集を行う部屋を準備する予定である(6月から始動)。大学院生1名、卒研生2名とでイモリとカエルの受精卵をコンスタントに得られる環境作りをし、MFCS1内のいろいろな配列をカエル化したり、イモリ化したりして四肢再生能との関係を明らかにしていく予定である。また、MFCS1のeRNAの発見については、イモリとカエルで詳細にその存在を検証するとともに、発現期間・発現部位などについても詳細に解析して論文として出版することを目標としている。また、科研費研究員を6月から採用することで、ニワトリを用いての関節再生実験を開始する予定である。具体的にはイモリやニワトリの四肢間葉系細胞の細胞凝集を作製し、そこにイモリやカエルあるいはニワトリの関節を差し込むことで、関節の誘導が惹起されるかどうかを検証する。克服しなくてはいけない課題として、どれくらいの大きさの四肢間葉系細胞の細胞凝集を作製できるかである。血管系ができない状態で大きな細胞塊を維持することは困難なので、指関節を対象として小さな細胞塊を対象とした実験系を確立する予定である。
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Research Products
(4 results)