2016 Fiscal Year Annual Research Report
Production of Super High-yielding Rice Plants for Environmental Conservation as the Green Evolution II
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16H06379
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧野 周 東北大学, 農学研究科, 教授 (70181617)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小原 実広 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生物資源・利用領域, 主任研究員 (10455248)
鈴木 雄二 東北大学, 農学研究科, 助教 (80374974)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | イネ / 光合成 / 多収 / バイオマス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は以下に述べる4課題について研究を実施した。 課題1として、Rubisco activase(RCA)増強イネの作製とその評価を行った。Rubiscoの葉内での活性は、酵素RCAによって制御される。RCAのオウンプロモーターとRBCSプロモーターによって発現が制御されるRCAの過剰発現体と抑制体イネを作製した。RCA量の増強効果のあった組換え体について、非破壊着葉レベルで光合成評価を行なったが、明確な効果は認められなかった。 課題2として、カルビン回路酵素増強イネの作製とその評価を行った。Rubisco増減組換え体のメタボローム解析の結果から、すでにカルビン回路の代謝産物であるS-7-P周辺の代謝の律速性が示唆されたので、ここでは、その代謝産物を挟んで代謝する酵素TKとSBPase の増強を試みた。得られた組換え体系統の光合成評価を行なったが、優位性は認められなかった。 課題3として、Rubisco増強イネの第一種使用ほ場試験を行った。Rubisco過剰生産イネに関しては、開放系ほ場試験である第一種使用承認を得たので、附属フィールド教育研究センター内の開放系隔離遺伝子組換えほ場における栽培実験を行い、Rubisco過剰生産イネが10%ほど多収であると言う結果を得た。この効果はバイオマス(乾物生産)増産に由来するもので、光合成(ソース)強化の結果と推定された。 課題4として、秋田63号由来のシンク拡大遺伝子の準同質遺伝子系統の作出を行っている。すでに、秋田63号の大粒を決定している主なQTLを同定していたので、DNAマーカーも開発し、ノトヒカリをバックに準同質遺伝子系統の作出を進めた。BC2F1での種子まで取れている。引き続き固定系統選抜を行う。その他、秋田63号とオオチカラの組合せによる遺伝解析集団F2、F3、F4個体の育成も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度内予定という意味においては、やや遅れを生じた。要因は、当初平成29年1月とされていた新キャンパスへの移転に伴う研究室と栽培施設の連続移転が、急遽研究室のみ先行して11月に移転することに変更になったこと、そして栽培施設の移転が平成29年2月に延期されてしまったことにより、栽培と解析を同時に進行させることができず、両者が同一キャンパスに揃うまで研究を一時中断せざるえなかったことによる。その結果、当初1か月と予測していた移転準備・中断期間を、想定外にも4か月延長せざるを得なくなったためである。そのため、600万円ほどの予算を平成29年度に繰り越し、上記、課題1の「Rubisco activase増強イネの作製とその評価」において、形質転換体の栽培と光合成評価の部分の実験が翌年度にずれ込んでしまった。 なお、それ以外の研究はほぼ順調に進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
RCAのオウンプロモーターとRBCSプロモーターによって発現が制御されるRCAの過剰発現体と抑制体イネの作製には成功し、複数系統はっきりとその効果が認められる組換え体が作製できた。しかしながら、明確にRCA量の増強効果のあった組換え体について、非破壊着葉レベルで光合成評価を詳細に検討したが、効果は認められなかった。これはある程度想定内の結果ではあったが、今後、Rubiscoの過剰生産イネとの二重組換え体作成の中でその効果を期待していきたいと考えている。また、RCAの増強がもたらす電子伝達系への影響を調べるなど、最終的な光合成評価には結びつかないまでも、そのプロセスの詳細な影響を明確にしていきたい。 一方、課題3において、Rubisco過剰生産イネが10%ほど多収であると言う結果を得たこと、そして、この効果はバイオマス(乾物生産)増産に由来するものであったことがわかったことは、本研究の目的である超多収イネ作出に向けて大きな1歩前進である。
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