2016 Fiscal Year Annual Research Report
Innovative catalysts for the synthesis of large- and medium-sized molecules bearing glycopeptides
Project/Area Number |
16H06384
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹本 佳司 京都大学, 薬学研究科, 教授 (20227060)
|
Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
|
Keywords | 合成化学 / 触媒 / 糖 / ペプチド / 中分子 / 不斉合成 / N-(ヒドロキシ)-アミノ酸 / 糖ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
アミノ酸や糖から構成される中分子化合物やバイオ医薬品を精密合成できる“合成触媒”を独自で開発し、触媒先導型の合成手法の確立を目指す。平成28年度は、下記の4課題に焦点をあてて検討した。 1.KAHAペプチド延長法に適用できるN-(OR)-アミノ酸誘導体の触媒的不斉合成を目指して、種々のキラルなボロン酸触媒の合成とBnONH2を求核剤に用いた不飽和カルボン酸への触媒的不斉アザマイケル反応を精査し、(1)β3-アミノ酸合成では、p-ニトロフェニルチオ尿素と第3級アミノ基を有するアリールボロン酸が活性と選択性の面で最適であることを見出し、所望のマイケル付加体を70-98% eeで得た。(2)上記の知見をα-アミノ酸合成に応用するため、フマル酸モノエステルに適用し、所望のN-OBn-アスパラギン酸を90% eeで合成することに初めて成功した。(3)本付加反応をβ2-アミノ酸合成に展開すべくα-置換不飽和カルボン酸に適用し、選択性は50% eeと中程度ではあるが、反応は定量的に進行した。 2.縮合剤を用いない触媒的ペプチド合成:チオール基を有するボロン酸触媒の合成を検討し、まだ最終化合物には到達していないが、1-mercapt-2-ethanolからチオイソシアナートを経由したキラルなシクロヘキシルジアミンとの反応でチオ尿素体の合成に成功した。 3.1,2-ジヒドロキシ糖供与体と糖受容体とのグリコシド化:前述のアミノボロン酸や電子不足なボロン酸では全く触媒活性を示さなかったが、o-位にカルボキシ基を有するフェニルボロン酸と3価フェロセンボロン酸によりグリコシル化が促進することを初めて見出した。 4.ペプチド含有中分子天然物の全合成:生物活性化合物に含まれる種々のアミノ酸の不斉合成法を開発し、それらを効率的に連結させて多剤耐性結核菌に有効なCPZEN-45の初の全合成に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.N-(OR)-α-アミノ酸の不斉合成は、Bode教授によってホモセリンとセリン誘導体のジアステレオ選択的な不斉合成が報告されているのみである。我々は、ヒドロキシルアミン類の不飽和カルボン酸への不斉アザマイケル反応に有効なキラルボロン酸触媒の開発に初めて成功し、90% eeを越える選択性でN-(OBn)-β3-アミノ酸の不斉合成法を確立した。さらに、N-(OR)-β2-アミノ酸の不斉合成への可能性を見出すとともに、所望のN-OBn-アスパラギン酸の不斉合成にも世界で初めて成功した。 2.当量の縮合剤を用いずに、2つのアミノ酸を温和な条件下で脱水縮合してペプチドを合成する人工触媒の開発は未だ発展途上の研究課題である。我々は、チオール基、チオ尿素、第3級アミノ基を同一分子内に有する新型ボロン酸触媒の合成を検討し、1-mercapt-2-ethanolとキラルなシクロヘキシルジアミンからチオ尿素体の合成に成功した。未だ最終目的化合物には到達していないが、種々のアリールボロン酸アルデヒドとの還元的なカップリング反応を見出し、多機能ボロン酸触媒合成への道を拓いた。 3.1,2-ジヒドロキシ糖供与体とモノアルコール糖受容体との脱水縮合反応を活性化剤を用いないで行える新規触媒のデザインと合成を検討した。市販されているアミノボロン酸や電子不足なボロン酸は所望のグリコシド化反応に対して全く触媒活性を示さなかったが、o-位にカルボキシ基を有するフェニルボロン酸と3価フェロセンボロン酸のみがグリコシル化反応を促進するという大変興味深い現象を初めて明らかにすることが出来た。 4.ペプチドを含有する中分子天然物として多剤耐性結核菌に有効なCPZEN-45を合成標的分子とし、そのための構成アミノ酸の不斉合成法を幾つか独自で開発し、それらを効率的に連結させることで、初の全合成を達成した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、下記の4課題について検討する予定である。 1.N-(OR)-β-アミノ酸誘導体の不斉合成:(1) 保護基の異なる様々なN-(OR)-アスパラギン酸誘導体を不斉合成し、RO基の脱保護を検討する。得られたN-(OR)-, N-(OH)-アスパラギン酸誘導体に対して適切なα-ケトカルボン酸と反応させ、ペプチド形成の可能性を確認する。(2)見出した触媒的不斉マイケル反応の適用範囲を調査するために、β-およびα-置換不飽和カルボン酸に対して種々の求核剤を作用させる。また選択性向上を目指した反応条件の精査、速度論と計算化学による反応機構の解明なども検討する。(3)α-ケトカルボン酸とヒドロキシルアミノ基を同時に持つ新規アミノ酸の初の合成に挑戦し、キラルな触媒を用いた触媒的不斉合成の可能性も探る。一方で、ヒドロキシルアミノ酸を必要としない新たなペプチド合成法の開発とフロー合成への応用を検討する。 2.触媒的ペプチド合成:ボロン酸、チオ尿素、求核部位(チオールなど)を同一分子内に持つ人工酵素触媒の合成を昨年度に継続して実施し、触媒が合成出来次第触媒活性を調べる。またそれとは異なる触媒作用が期待できるボロン酸も種々合成し、アミド化反応の検討ならびに触媒構造最適化と触媒作用解明を同時に進める。 3.O-グリコシド化反応:昨年度見出したボロン酸触媒は、速度論ではなく熱力学支配の生成物を与える触媒であった。そこで、今年度は所望のシス選択性が期待できるボロン酸触媒存在下でのO-アルキル化反応を中心に研究を実施する。さらにN-グリコシル化反応についても触媒検討を開始する。 4.擬似糖含有天然物合成:農薬として期待されるAvenaolの世界初の全合成を開始する。中でも特徴的な構造であるエノールとブテノリドのエーテル結合形成を立体選択的に行える触媒反応を確立し、全合成を完成させる。
|
Research Products
(30 results)