2019 Fiscal Year Annual Research Report
Innovative catalysts for the synthesis of large- and medium-sized molecules bearing glycopeptides
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16H06384
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹本 佳司 京都大学, 薬学研究科, 教授 (20227060)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | 合成化学 / 触媒 / 不斉合成 / N-(ヒドロキシ)-アミノ酸 / オリゴ糖 / ペプチド / 糖ペプチド / 中分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
触媒的ペプチド合成:昨年度見出した gem-ジボロン酸を用いてテトラペプチドを合成した。2つの芳香環パラ位にOMe, tBu, Cl, CF3を導入した新規触媒を合成し、アミノ酸、脂肪族および芳香族カルボン酸についてアミド化を検討した。 ペプチド鎖連結法:α-ケト酸とTBHPを用いた酸化的ペプチド合成法によりテトラおよびヘキサペプチドの合成に応用した。また同反応でTBHPの代わりにS8を用いるとチオアミドが収率よく得られた。さらに本反応の原料であるα-ケト-β-アミノ酸の不斉合成法として、N-Boc-脂肪族イミンに適用可能な新触媒を開発し、様々なアルキル基をもつキラルケト酸の量的供給を可能にした。 O-グリコシド化反応:糖-1,2-ジオールと糖-1-ホスファイトを環状ボリン酸触媒で処理することで高立体選択的に1,1'-α,β-トレハロースが得られることを見出した。また、2位アミノ基をスルホニル基で保護したグルコサミンやガラクトサミンを糖受容体に用いても対応する1,1'-グリコシドが合成できた。さらに、アンヒドロ糖を用いると逆の立体異性体1,1'-α,α-トレハロースが生成し、ワクチンとして期待されるSTL-1を合成した。 N-グリコシド化反応:2-デオキシ-N-グリコシド体の立体選択的合成を目指して、グリカール(およびガラクタール)へのアミドおよびペプチドのヒドロアミド化反応を検討し、2-クロロアゾール・TfOH錯体が反応を特異的に加速させることを見出した。また、官能基共存性が非常に高いことから、幅広い反応基質に適用可能であることを明らかにした。 天然配糖誘導体合成:アキラルなケトエノールとラセミの塩化ブテノリドのエナンチオ選択的アセタール形成を94:6 erの選択性を示す新触媒を開発し、多彩なストリゴラクトン誘導体の不斉合成にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(I) ペプチド・タンパクの革新的化学合成法の開発研究 (1) gem-ジボロン酸の触媒活性種の推定構造をスペクトル解析により明らかにした。DFT計算による反応機構解析がやり易くなった点で研究を大きく前進させた。(2) OMe, tBu, Cl, CF3を導入した新規gem-ジボロン酸触媒を4種類合成した。それら触媒のアミド化加速効果が用いるカルボン酸の種類により異なることから、律速段階の解明に繋がる重要な知見を得た。(3) α-ケト酸を用いた酸化的ペプチド合成法が汎用性の高い反応であることを明らかにした。また酸化剤をS8に変更し活性化法を確立することでチオアミドの簡便合成法を確立し、本研究を大きく進展させた。さらに原料として必要な脂肪族β-アミノ-α-ケト酸の新たな不斉合成法も確立し、多様なオリゴペプトイドの画期的な合成法に発展する可能性を示せた。 (II) オリゴ糖・糖鎖の革新的化学合成法の開発研究 (4) 1,2-ジオールとボリン酸触媒から形成される錯体が、特定の糖受容体を選択的に活性化しグリコシル化を促進する酸触媒として機能することを発見した。これにより、有機ホウ素触媒の新たな活用法を提示するとともに、従来立体制御が困難であった1,1'-グリコシドの選択的合成を大きく前進させた。(5) グリカール(およびガラクタール)とアミド(およびペプチド)のヒドロアミド化反応を触媒する2-クロロアゾール・TfOH錯体を開発し、2-デオキシ-N-グリコシド類の世界初の触媒的合成に成功し、グリコペプチド合成の効率化に大きく貢献した。(6) イネに寄生する根寄生植物の発芽を刺激するストリゴラクトン類の不斉合成に必要な(4R)-4-アルコキシブテノリドの実践的合成法を他に先んじて確立できた。本法を活用してavenaolを始め幾つかのストリゴラクトン類の不斉合成に適用可能であることを実証した。
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Strategy for Future Research Activity |
1) ペプチド形成触媒の創製: 各種gem-ジボロン酸触媒のスペクトル解析、反応速度論、DFT計算を駆使して反応中間体と反応機構を解明しながら、触媒活性の向上と生成物のエピメリ化抑制を両立させる新規触媒の合理的な設計を行う。エピメリ化の原因を究明するために、反応条件の最適化と添加剤の探索を実施する。 2) α-ケト酸を用いたペプチド連結法: 独自手法で調製したキラルなα-ケト-β-アミノ酸を用いて、連続ペプチド合成やより長いペプチド鎖同士の連結合成などを検討する。その際、バッチからフロー合成に展開し、スケールアップなど実用化への可能性を探る。アミド以外のチオアミドやセレノアミドの合成にも拡大する。 3) O-グリコシド化反応: ボリン酸触媒を用いた1,1’-グリコシド誘導体の立体選択的合成については、選択性と収率を改善すべき基質があるので、反応機構の解析とともに改良法を継続して探索する。これまでのO-アルキル化で得た知見を活用して、まだ報告例のない1,2-無保護糖とボリン酸触媒を用いた位置および立体選択的なアノマー位O-リン酸化反応を検討する。 4) N-グリコシド化反応: より難易度の高いグルコサミンやガラクトサミン誘導体に対して、様々なアミドを導入できる触媒系(2位アミノ基の保護基と新規触媒の探索)の開発を目指す。さらに、より長鎖のペプチドやペプチド医薬品として臨床研究が開始されているペプチド鎖の導入を検討する。 5) 配糖体類縁体の合成: (2),(3),(4)で見出した各素反応を組み合わせて利用することで、生物活性を有するペプチド系天然物や中分子ペプチド医薬品を独自の手法で合成するとともに、ペプチド側鎖に含まれる水酸基やアミド基を足掛かりにした位置特異的な糖鎖修飾を施し、DDSを志向したプロドラック化あるいは体内動態を改善したグリコペプチド医薬の創製を目指す。
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Remarks |
研究室全体および基盤研究Sの研究体制と研究業績を紹介している
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