2017 Fiscal Year Annual Research Report
受容体の超過渡的複合体によるシグナル変換とアクチンによる制御:1分子法による解明
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16H06386
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
楠見 明弘 沖縄科学技術大学院大学, 膜協同性ユニット, 教授 (50169992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 敬宏 京都大学, 高等研究院, 特定准教授 (80423060)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | 過渡的分子複合体 / アクチン膜骨格 / 細胞膜 / シグナル複合体 / シグナル変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は最近、超高速1分子FRET法を開発し、細胞膜のシグナル伝達について2つの驚くべき観察をした。3つの受容体系(補体制御のCD59、アレルギーに関わるFcエプシロン受容体、アドレナリンGPCR)において、(1)シグナル分子複合体は、生細胞内で1分子法で直接見ると、大きくも安定でもなく、0.1秒オーダーで様々なシグナル分子がやってきては去っていくような著しく動的な機構で働く、(2)アクチン膜骨格がシグナル変換の基盤として働く、である。これらは多くのシグナル系に共通の基本戦略・原理であると思われる。 本研究は、主に上記3つの受容体系を用い、これら2つのシグナル機構を解明することを目的とする。以て、細胞のシグナル機構研究にパラダイム変換を誘起することを目指す。シグナル異常による多くの病気の理解に寄与するだけでなく、薬剤の新しい設計概念につなげたい。 本年度は以下の研究実績をあげた。(1)超高速1分子追跡と超高速PALMイメジングの同時実行法の開発をさらに推進した(論文準備中)。(2)1分子現象、特に、膜分子の一時停留時間を測定するための理論構築を行った(Nat. Chem. Bioil.に掲載)。(3)シグナル変換の著しく動的な機構の解明を、CD59とFcε受容体の系において検討を継続し、後者については、論文執筆を開始した。(4)膜骨格は、細胞膜のシグナル系に対して、シグナル分子を閉じ込める囲いとして働き、局所シグナルを誘起する、という仮説の検討を始め、細胞膜の内側表面におけるアクチン膜骨格とアクチンクラスターの相互作用と動態、ポドソームとの関連を明らかにした(PLoS Oneに掲載)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ほぼ計画通り(もとの申請書と本年度の交付申請書に記入した通り)、本課題の研究はおおむね順調に進捗した。すなわち、(1)超高速1分子追跡と超高速PALMイメジングの同時実行法の開発のさらなる推進、(2)1分子現象、特に、膜分子の一時停留時間を測定するための理論構築、(3)シグナル変換の著しく動的な機構の解明の進捗、(4)膜骨格は、細胞膜のシグナル系に対して、シグナル分子を閉じ込める囲いとして働き、局所シグナルを誘起する、という仮説の検討を始め、細胞膜の内側表面におけるアクチン膜骨格とアクチンクラスターの相互作用と動態、ポドソームとの関連の解明など、ほぼ予定通り研究は進捗した。これらの研究に基づく論文の執筆と、雑誌への掲載も、始めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1分子イメジング・追跡の方法開発については、それらをさらに推進する。すなわち、以下のような方策で研究を進める予定である。(1)超高速1分子追跡については、興味のある分子1個に、5個程度の蛍光分子を結合させ、時間分解能をいまの5倍程度、すなわち、20マイクロ秒未満にまで、さらに改善する。また、このために開発しているカメラの1分子検出能力について詳しく評価し、論文にまとめる。(2)シグナル分子のCD59 会合体ラフトでの分子間相互作用の解明研究については、まずは、そこに次々とやってくるシグナル分子の出入りを、29年度に開発した超長時間1分子追跡法を用いて明らかにすることを目指す。さらにCD59 会合体ラフトの中で(それが10nm 程度の小さな構造体という仮説を検討しつつ)、そこへリクルートされて来る分子同士の相互作用と反応を、超高時間分解能で1分子レベルで検討することによって解明する。(3)Fcε受容体についてのシグナル機構、特にLAT1が働く機構を調べる。(4)アドレナリン受容体(GPCR)の2量体の生物機能について検討を進める。(5)膜骨格のシグナル変換への関与についての検討を開始する。
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