2018 Fiscal Year Annual Research Report
受容体の超過渡的複合体によるシグナル変換とアクチンによる制御:1分子法による解明
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16H06386
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
楠見 明弘 沖縄科学技術大学院大学, 膜協同性ユニット, 教授 (50169992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 敬宏 京都大学, 高等研究院, 特定准教授 (80423060)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | 過渡的分子複合体 / アクチン膜骨格 / 細胞膜 / シグナル複合体 / シグナル変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)超高速1分子追跡と超高速PALMイメジングの同時実行法の開発をさらに推進し、インテグリン分子が、接着班分子の小島に結合と解離を繰り返しつつ、接着班内を拡散することを証明した。また、タンパク質に平均5個の蛍光分子を結合させたときには、時間分解能を22マイクロ秒まで改善できた。超高速1分子追跡と超高速PALMイメジングの基礎的な性能を正確に測定し、論文執筆を開始した。 (2)前年で分かってきた、CD59 会合体ラフト上で、シグナル分子が著しく動的に会合して機能する過程を、高速1分子観察によってさらに詳しく解析し、過渡的分子集合体の形成と機能の機構の解明を継続した。リガンド刺激後、CD59は会合体を形成し、それが核となって糖脂質やコレステロールをリクルートして、直径10nm程度のCD59 会合体ラフトを形成する。 2a) CD59 会合体ラフトに、5 回膜貫通のCD47 とインテグリン2 分子が過渡的にリクルートされることを明らかにした。 2b) これらの分子が、Talinなどから成るアクチン膜骨格上のシグナル変換のプラットフォームと相互作用するらしいことが分かってきた。CD59 会合体ラフトにLynがリクルートされて来るが、これが、プラットフォーム上のFAKをリン酸化して活性化し、さらに、多くのFAKの集合と活性化を誘起する、という作業仮説が得られた。FAK分子の滞在時間も短く、1秒のオーダーであった。 (3)Fcε受容体のシグナル機構を調べた。受容体が多価抗原によってクロスリンクされると、細胞内カルシウムイオン動員により免疫反応が起こる。このシグナル経路で鍵となる足場タンパク質が、リンカー分子のLATである。本年の研究で、シグナルに関わるLATは、細胞膜上にあるLATではなく、膜骨格に結合して細胞膜内側表面と相互作用するLAT小胞上のLATであること、が分かってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)1分子追跡の超高速化(時間分解能0.1ms)、PALM観察の超高速化(1画面1秒程度)、これらを同時に実行する装置の開発に成功した。1分子の位置決定精度は20nm程度に出来た。この装置を用いて、細胞膜上にある接着班までもアクチン膜骨格によってコンパートメント化されていることが分かってきた(投稿準備中)。 (2)1分子追跡時間を、蛍光分子の退色と点滅を制御し、100秒程度まで延ばすことに成功した(Nat. Chem. Biol. に出版)。 (3)シグナル変換の著しく動的な機構の解明。以下の分子が、CD59会合体ラフトへ、1秒未満の短時間、リクルートされることを見いだした。CD47, integrinβ3, 3量体Gタンパク質、Lyn、calreticulin,、thrombospondin、N-WASP、Talin、vinculin、zixin。すなわち、CD59会合体ラフトはシグナルプラットフォームの一部として、重要な役割を果たしていることが分かってきた。またFcε受容体のシグナル機構をマスト細胞で検討した。シグナル変換の鍵となるリンカー分子のLATは、細胞膜上ではなく膜骨格に結合している小胞(LAT vesicleと名付けた)上ではたらき、そこに下流シグナル分子が過渡的に結合してくることが分かった。 (4)アクチン膜骨格がシグナル変換の共通基盤としてはたらく仕組みの解明を進めた。膜骨格を直接観察することに成功した。これは、出版済みである(PLoS One)。現在、アクチン膜骨格は足場タンパク質とシグナル分子を集積していて、細胞膜で起こるシグナル変換に、新たな分子群と、足場(プラットフォーム)を提供する、という仮説を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)1分子追跡の超高速化(時間分解能0.1ms)、PALM観察の超高速化(1画面1秒程度)、これらを同時に実行する装置の開発に成功した。これらの装置の特性の評価と改善を進める。さらに、これらの装置を用いて、細胞膜上にある接着班までもアクチン膜骨格によってコンパートメント化されていることが分かってきたが、これらについてさらに検討を進めてコンパートメントの大きさと滞在時間について最終結論を得て、論文発表する。 (2)外部シグナルによってCD59会合体ラフトが形成されると、そこへ、Src-family kinaseであるLynが、次々とリクルートされ、平均0.2秒程度の短時間滞在した後、去って行くことを見出した。一方、アクチン膜骨格の網目には、FAK, Talin, zixin, VASP, integrinなどからなる島(接着班分子として知られているタンパク質群だが、ベーサル膜ではなく、アピカル膜上に存在し、ナノサイズの会合体を作っている)があり、そこにLynを結合したCD59会合体ラフトが結合することも分かってきた。そこで、現在の作業仮説は、以下の通りである。すなわち、Lynがナノサイズの島に結合することでFAKがリン酸化により活性化され、それが、さらなるFAKのリクルートとFAKの活性化を誘起する。この仮説の成否を検討しつつ、シグナル変換の著しく動的な機構と生物学的意義の解明を進める。 (3)Fcε受容体のシグナル機構をマスト細胞で検討し、シグナル変換の鍵となるリンカー分子のLATは、細胞膜上ではなく膜骨格に結合している小胞(LAT vesicleと名付けた)上にあり、そこに下流シグナル分子PLCγが過渡的に結合してくることが分かった。そこで、LAT小胞と細胞膜内側表面との相互作用、PLCγのリクルート頻度、PLCγの基質がLAT小胞に移送/生成される機構を解明する。
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Research Products
(8 results)