2016 Fiscal Year Annual Research Report
抑制性免疫受容体による自然免疫応答の制御機構の解明
Project/Area Number |
16H06387
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渋谷 彰 筑波大学, 生命領域学際研究センター, 教授 (80216027)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | 自然免疫 / 免疫受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫応答においては、自己障害を避けるために、過剰な免疫応答を制御する機構が必要である。しかし、リンパ球と異なり、樹状細胞、マクロファージ、好中球、肥満細胞などの自然免疫応答を担う免疫細胞の活性化抑制機構は充分に解明されていない。本研究では、免疫細胞の活性化を負に制御する抑制性免疫受容体による自然免疫応答の制御機構を明らかにすることを目的とした。そのため、これらの免疫受容体のリガンドを同定し、リガンドとの結合の時空間局在を解析する。また、感染、アレルギー、炎症などの疾患モデルマウスを用いて、疾患病態における抑制性免疫受容体の意義を明らかにする。これらの結果をもとに、抑制性免疫受容体を分子標的とした医薬の創出の可能性を探る。 平成28年度では、抑制性受容体CD300aの機能の解析を行い、組織特異的遺伝子欠損マウスを樹立し、解析したところ、マスト細胞のみならず、樹状細胞に対しても好中球遊走因子の産生を抑制し、腹腔内の細菌の除去が低下する結果、敗血症の病態を増悪することを明らかにした(Udayanga, et al, Int Immunol, 2016)。また、Allergin-1の機能の解析を行い、皮膚に局在するマスト細胞上に発現するAllergin-1が、黄色ブドウ球菌由来のTLR-2リガンドを認識したTLR-2を介するシグナルを抑制し、皮膚炎の病態を制御することを明らかにした(Tsurusaki, et al, Int Immunol 2016)。 また、アトピー性皮膚炎を自然発症するNc/Ngaマウスの原因遺伝子を同定し、これが新しい抑制性免疫受容体をコードすることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下記の進捗状況から、研究計画の進展が順調と判断した。 1)抑制性受容体CD300aの機能の解明 敗血症は細菌などの感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害と定義される。これまでCD300aは、CLPモデルマウスを用いて、マスト細胞からの好中球遊走因子の産生を抑制し、腹腔内の細菌の除去が低下する結果、敗血症の病態を増悪することを示してきた (Nakahashi, et al. J Exp Med 2012)。今回、組織特異的遺伝子欠損マウスを樹立し、解析したところ、マスト細胞のみならず、樹状細胞に対しても好中球遊走因子の産生を抑制し、腹腔内の細菌の除去が低下する結果、敗血症の病態を増悪することを明らかにした(Udayanga, et al, Int Immunol, 2016)。
2)抑制性受容体Allergin-1の機能の解明 アトピー性皮膚炎の患者の皮膚では、しばしば黄色ブドウ球菌が繁殖し、病態との関連が指摘されている。今回、皮膚に局在するマスト細胞上に発現するAllergin-1が、黄色ブドウ球菌由来のTLR-2リガンドを認識したTLR-2を介するシグナルを抑制し、皮膚炎の病態を制御することを明らかにした(Tsurusaki, et al, Int Immunol 2016)。
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Strategy for Future Research Activity |
1)リガンドの同定 免疫受容体はリガンドとの結合によりシグナル伝達が開始されることから、その機能を明らかにするためには、それぞれのリガンドを同定することが必須である。これまで、応募者らは、MAIR-Iのリガンドがアポトーシス細胞膜上に表出するフォスファチジルセリン(PS)であることを報告したが、その他のに抑制性免疫受容体についても同様に解明する。 2)抑制性受容体とリガンドとの結合の時空間局在の解明 CD300aのリガンドを発現するアポトーシス細胞は、生体内で定常時でも毎秒106個に及ぶほど多数生成されているとされる。例えば成体における腸管、皮膚、気管、泌尿生殖器などの粘膜上皮細胞では、常に多数のアポトーシス細胞が生成され、また炎症時にはその局所でも生成される。CD300aの機能解明には、CD300a発現細胞とアポトーシス細胞が、いつ、どこで出会うかを明らかにすること、すなわち、リガンドとの結合の時空間的局在の解明が必須である。1で同定した抑制性受容体のリガンドとそれぞれの抑制性免疫受容体の結合についても、その時空間局在を解明する。 3)抑制性受容体の疾患病態における細胞特異的機能の解明と分子標的としての可能性の検討 我々が同定した抑制性免疫受容体は、樹状細胞、マクロファージ、肥満細胞などの多様な免疫細胞に発現するが、それぞれの細胞系列ごとの機能が個体での免疫応答にどのように反映するかを明らかにする必要がある。応募者らは、それぞれのnull遺伝子欠損マウスを作成しているが、それぞれコンディショナル遺伝子欠損マウスを樹立し、細胞特異的機能を明らかにする。さらに、その生理学的、病理学的機能を、感染、アレルギー、炎症などの疾患モデルマウスを用いて解明する。
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[Journal Article] Soluble DNAM-1, as a predictive biomarker for acute graft-versus-host disease2016
Author(s)
Kanaya M, Shibuya K, Hirochika R, Kanemoto M, Ohashi K, Okada M, Wagatsuma Y, Cho Y, Kojima H, Teshima T, Imamura M, Sakamaki H, Shibuya A
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Journal Title
PloS One
Volume: 11
Pages: 1-12
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Increased soluble CD155 in the serum of cancer patients2016
Author(s)
Iguchi-Manaka A, Okumura G, Kojima H, Cho Y, Hirochika R, Bando H, Sato T, Yoshikawa H, Hara H, Shibuya A, Shibuya K
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Journal Title
PloS One
Volume: 11
Pages: 1-12
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] The regulatory role of Allergin-1 in autoantibody production2016
Author(s)
Iizuka A, Segawa S, Kaneko S, Yokosawa M, Kondo Y, Tahara-Hanaoka S, Shibayama S, Goto D, Matsumoto I, Shibuya A, Sumida T
Organizer
第45回日本免疫学会総会・学術集会
Place of Presentation
沖縄コンベンションセンター(沖縄県宜野湾市)
Year and Date
2016-12-05 – 2016-12-05
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[Presentation] Apoptotic epithelial cells control the abundance of regulatory T cells at barrier surfaces2016
Author(s)
Nakahashi-Oda C, Udayanga K. G. S, Nakamura Y, Nakazawa Y, Totsuka N, Miki H, Iino S, Tahara-Hanaoka S, Honda S, Shibuya K, Shibuya A
Organizer
International Congress of Immunology 2016
Place of Presentation
Melbourne Convention and Ehibition Centre, Australia,
Year and Date
2016-08-25 – 2016-08-25
Int'l Joint Research
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