2016 Fiscal Year Annual Research Report
公務員の対外的賠償責任のあり方をめぐる比較法的考察
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16H06584
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
津田 智成 北海道大学, 法学研究科, 助教 (00779598)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 行政法 / 国家賠償法 / フランス法 / フランス行政法 / フランス国家賠償法 / 公務員 / 公務員の個人責任 / 個人的フォート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、公務員の対外的賠償責任のあり方をいかに考えるべきかという問題意識の下、この問題に関する法学的な議論を最も継続的な形で蓄積してきたフランスの判例・学説を網羅的に渉猟することにより、理論・政策・修復的正義といった多角的な観点から、その各々の要請を調和させる法解釈論の構築を目指す試みである。 研究初年度の平成28年度は、研究実施計画に従い、次の3つのタスクを遂行した。すなわち、①現地での資料収集とその整理、②判例の具体的事例研究、学説の歴史的分析の3つである。以下、それぞれ敷衍する。 まず、研究課題に取り掛かるに先立って、現在のフランスにおける公務員の対外的賠償責任に関する法理の形成ないし確立に当たって重要な役割を果たした19世紀後半から20世紀初頭の資料を収集するために、秋にフランスに赴き、既にリストアップを済ませていた資料の収集並びに当該リストから漏れた資料の存否の調査を行った。 次に、かくして収集した資料等を基に、判例上いかなる事例において公務員の対外的賠償責任が認められているのかという問題関心から具体的な事例研究を行うことにより、判例法理の類型的解明を図った。そこでは、「故意」と「重大なフォート」という2つの主要な責任要件の類型の存在を明らかにした上で、その線引きのあり方を解明した。 さらに、こうした判例法理に対して学説上いかなる規範的評価が加えられてきたのかという問題関心から、公務員の対外的賠償責任を肯定する実質的論拠を探求した。そこでは、裁判管轄の分配に係る権力分立原則の保護の要請、より充実した被害者救済の要請、萎縮効果の回避(一般利益の保護)の要請、公務員個人の保護の要請などの存在を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
既に論文の執筆を進めており、秋頃には公表できる予定のため、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を、複数の研究会で報告することにより、これを外在的検証にさらす。かくして、多様な視点からフィードバックを得ることにより研究成果の精緻化を図る。
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Research Products
(1 results)