2016 Fiscal Year Annual Research Report
スピン軌道相互作用が強い磁性体に潜むトロイダルモーメントの理論的探索・制御
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16H06590
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
速水 賢 北海道大学, 理学研究院, 助教 (20776546)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 磁性 / 反対称スピン軌道相互作用 / トロイダルモーメント / 多極子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、時間・空間反転対称性がともに破れた系に現れるトロイダルモーメントを、ミクロな視点から特徴づける理論形式を構築し、実験的に観測・制御するための理論を確立することである。特に本年度においては、電子のもつ電荷・スピン・軌道といった複数の自由度が複雑に絡み合った系において、磁気秩序がトロイダルモーメントを伴うかどうかを判定する基礎的な理論を構築した。具体的には、結晶場、スピン軌道相互作用、電子相関による対称性の破れを取り入れたモデルに対して、サイト間のホッピングを摂動とみなすことにより、秩序形成の元での有効的な反対称スピン軌道相互作用を導出した。その結果、得られた反対称スピン軌道相互作用の時間・空間反転対称性の有無および波数ベクトル依存性から、トロイダルモーメントの有無を判定できることを明らかにした。このスキームは、1. 複雑な多バンド系に関しても適用できる、2. トロイダルモーメントがどのモデルパラメタに強く依存しているかを理解できる、3. 単純な磁気秩序だけではなく、軌道自由度やバレー自由度を含んだ磁気と軌道の複合秩序や磁気四極子などの高次磁気多極子への拡張を行うことができる、という3つのメリットを有することを見出した。また上で得られた理論形式を現実物質に用いて解析を行った。ここでは交替的な反強磁性秩序相においてトロイダルモーメントが活性化している可能性のあるKOsO4に対して解析を行い、磁気モーメントの向きに応じてトロイダルモーメントの向きが変化し、それに伴って異なる電気磁気応答が得られることを明らかにした。さらに、比較のためにスピン軌道相互作用が無い系に対する解析も行い、トロイダルモーメントを伴う磁気渦結晶が遍歴磁性体において発現することを示し、その機構がフェルミ面効果に由来するものであることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の通り、摂動論を用いた解析計算を行うことにより、スピン軌道相互作用が強い磁性体に潜むトロイダルモーメントをミクロな立場から理論的に定式化することができたため。この定式化により、トロイダルモーメントをミクロな視点から基礎づけることが可能となるため、これまでありふれた磁性体とみなされていた物質の新しい側面を開拓することが期待できる。また、トロイダルモーメントを有する候補物質である KOsO4 に対して、得られた理論形式を適用し、磁気秩序相において誘起されるトロイダルモーメントの向きやそれが外部電場に対してどのように変化するのかを明らかにしたことも理由の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、平成28年度の研究を引き続き行いつつ、当初の研究計画通り、非磁性不純物や外場を利用したトロイダルモーメントの観測・制御に関する研究を推進する。特にスピン軌道相互作用が強い強磁性体に対する非磁性不純物効果を調べることにより、トロイダルモーメントを局所的に誘起する可能性を明らかにする。また、これまでに得られた結果を国内・国外の学会・研究会で成果発表するとともに、論文に取りまとめる。
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Research Products
(2 results)