2016 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌由来抗腫瘍活性物質の同定とその認識機構および細胞シグナル活性化機構の解明
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16H06607
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
小西 弘晃 旭川医科大学, 医学部, 客員助教 (30777181)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | プロバイオティクス / 抗腫瘍活性物質 / アポトーシス / 癌治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロバイオティクスなどの腸内細菌を摂取することで腸内細菌叢の正常化や抗腫瘍効果など有益な作用がもたらされることが知られている。しかしながら、これら腸内細菌の抗腫瘍活性は、培養条件の差によって生じる作用の不安定性や宿主腸内細菌叢などの腸内環境の個体差などの影響を受けるため、臨床的に抗腫瘍効果が証明された報告はない。そこで本研究では、腸内細菌の抗腫瘍活性を仲介する菌由来物質を用いた作用メカニズム解析を行うことにより、安定した抗腫瘍効果が発揮でき、かつ安全性の高い抗腫瘍薬の開発へつなげるための基礎的検討を行った。 乳酸菌由抗腫瘍活性物質としてフェリクロームを同定した。フェリクロームはJNKシグナルを介した小胞体ストレス経路を介して抗腫瘍活性を発揮することを明らかにし、大腸癌細胞、膵癌細胞、胃癌細胞、食道癌細胞においても抗腫瘍効果を発揮した。一方で、正常細胞に対しては増殖抑制効果を示さないことを明らかにした。フェリクロームは鉄とキレートする分子であり、この鉄結合部位の構造が抗腫瘍活性を発揮するために必須であること、細胞内鉄の減少率と抗腫瘍効果には相関関係がないこと、および哺乳動物におけるフェリクローム認識候補分子を網羅的立体構造解析により明らかにした。 哺乳動物における抗腫瘍活性の作用を仲介する分子が明らかになれば、新たな癌治療の分子標的の発見につながる可能性や癌個別化医療への応用が期待される。また、安定的かつ高純度のフェリクロームを十分量確保することで発癌モデル動物を用いた前臨床試験を効率的に推進することが可能である。そこでフェリクロームの抗腫瘍作用の仲介分子の同定とフェリクロームの合成経路の構築、さらに既存抗癌剤併用時の抗癌作用の評価を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳酸菌株L.casei ATCC334から抗腫瘍活性物質フェリクロームを同定することに成功し、その作用メカニズムとして小胞体ストレス経路を介したアポトーシスが関与していることを明らかにした(Konishi H, Nat. Commun, 2016)。フェリクロームの抗腫瘍作用はマウス癌細胞移植モデル及び化学発癌モデルマウスにおいても確認できた。特筆すべきことに大腸癌細胞に対しては5-FUやシスプラチンなどの既存抗癌剤よりも強力な作用を発揮すること、およびこれらの併用時には相加効果を発揮することを見出した。また、フェリクロームは大腸癌細胞、膵癌細胞、胃癌細胞、食道癌細胞においても抗腫瘍効果を発揮すること、抗腫瘍活性を発揮するために必要なフェリクローム中の構造および哺乳動物におけるフェリクローム認識候補分子を明らかにした(Ijiri M, Konishi H, Tumor Biol, In Press)。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は①同定した抗腫瘍活性物質フェリクロームの作用メカニズム解析、②フェリクロームの量産化に向けた基礎的検討、③動物モデルでのフェリクロームの安全性と有効性の評価、④プロバイオティクスが産生するフェリクローム以外の抗腫瘍活性物質の同定と作用メカニズム解析、を行う。 ①フェリクロームの作用メカニズムの解析:フェリクロームの化学合成経路を応用して構造中に抗体タグを標識する。タグ標識フェリクロームを細胞に処置し、免疫染色法によりフェリクロームの細胞内外の移行を評価する。また、タグ標識フェリクロームを細胞に処置して免疫沈降-質量分析解析を行い、フェリクロームと結合する分子を明らかにする。フェリクローム結合分子の発現抑制細胞を構築し、フェリクロームの抗腫瘍効果が打ち消されることを確認する。 ②フェリクロームの量産化に向けた基礎的検討:フェリクロームの既知の化学合成経路を改良することにより総収率を向上させる(予備検討では既知法に比較して改良法では総収率を約4倍にまで向上することに成功した)。 ③動物モデルでのフェリクロームの有効性と安全性の評価:フェリクロームを多種類の癌モデルマウスに投与し、抗腫瘍効果の評価を行う。フェリクロームを抗腫瘍効果が確認された投与量の10~100倍量をマウスに投与し、死亡率や血液検査値の異常を評価する。 ④プロバイオティクスが産生する抗腫瘍活性物質の同定:これまでに種々の乳酸菌やビフィズス菌の培養上清が癌細胞の増殖抑制効果を発揮することを見出した。より多くの種類のプロバイオティクスの培養上清を回収し強い抗腫瘍効果を発揮する培養上清を選別する。抗腫瘍活性を指標に選別した培養上清を分離・精製し、質量分析解析にて抗腫瘍活性物質を同定する。同定した活性物質を細胞に処置し遺伝子の網羅的発現量解析を行い、抗腫瘍活性物質の作用メカニズムを検討する。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Ferrichrome, a tumor suppressive molecule derived from Lactobacillus casei, inhibits the progression of colorectal cancer via the endoplasmic reticulum stress pathway2017
Author(s)
Hiroaki Konishi, Mikihiro Fujiya, Masami Ijiri, Kazuyuki Tanaka, Shugo Fujibayashi, Takuma Goto, Shin Kashima, Katsuyoshi Ando, Keitaro Takahashi, Nobuhiro Ueno, Junpei Sasajima, Kentaro Moriichi, Hiroki Tanaka, Katsuya Ikuta, Katsutoshi Okumura
Organizer
Digestive Disease Week 2017
Place of Presentation
McCormick Place、米国、シカゴ
Year and Date
2017-05-06 – 2017-05-09
Int'l Joint Research
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[Patent(Industrial Property Rights)] 抗腫瘍剤2017
Inventor(s)
藤谷幹浩、小西弘晃、盛一健太郎
Industrial Property Rights Holder
国立大学法人旭川医科大学
Industrial Property Rights Type
特許
Industrial Property Number
PCT/JP2017/1803
Filing Date
2017-01-19
Overseas