2016 Fiscal Year Annual Research Report
先天性下垂体機能低下症の新たな発症機構の解明:PIT-1β変異の機能解析
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16H06608
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
鈴木 滋 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80516394)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 先天性下垂体機能低下症 |
Outline of Annual Research Achievements |
3世代にわたる複合型下垂体機能低下症家系(成長ホルモン(GH)分泌不全に加え、プロラクチン(PRL)分泌不全あるいは甲状腺ホルモン刺激ホルモン(TSH)分泌不全)に同定した変異PIT-1βの病的意義を解明するため、以下について検討した。 PIT-1β変異体の標的遺伝子の転写活性に与える影響をプロモーターアッセイにて解析した。実験には非下垂体培養細胞(HeLa細胞)および下垂体培養細胞(GH3細胞)を用い、ラットGHおよびPRLプロモーターを用いたルシフェラーゼ活性を測定した。HeLa細胞においては、PIT-1βおよび変異PIT1-1βはPIT1-αに比べ有意に転写活性能は低く、PIT1-1αに対する優性阻害効果は示さなかった。PIT-1βおよび変異PIT-1βとも用量依存性に転写活性を上昇させ、変異PIT1-βはPIT-1βに比べ、有意に転写活性能は高い結果であった。GH3細胞においては、内因性PIT-1に対しては、PIT-1βおよび変異PIT-1βとも優性阻害効果を有し、変異PIT-1βはPIT-1βに比べその効果は減弱していた。PIT-1αを強発現させた場合には、PIT-1βおよび変異PIT-1βともにPIT-1αに対する優性阻害効果は認められず、PIT-1αの転写活性をわずかに上昇させた。以上の結果から、変異PIT-1βは機能喪失変異ではない可能性が示唆された。ヒト下垂体細胞でのPIT-1βの発現量を考えると、変異PIT-1βが病因となる仮説として、PIT-1αの発現量を低下させること、変異PIT-1βの発現量が増加すること、直接的なプロモーター活性以外に与える影響の存在が挙げられた。 PIT-1β変異が他の下垂多機能症例に認められるかを、特発性の下垂体性GHおよびTSH分泌不全の1例において遺伝子解析を施行したが、変異は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
変異PIT-1βの機能は、野生型に比べ機能喪失を起こさないこと、かつ、優性阻害効果の増強も認めず、当初予想していなかった結果を認め、研究遂行にあたり、方針を考え直す必要性が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
変異PIT-1βが、成長ホルモン(GH)やプロラクチン(PRL)あるいは甲状腺刺激ホルモン(TSH)の転写活性を抑制するメカニズムとして、変異PIT-1βの発現上昇あるいはPIT-1αの発現低下が仮説として考えられ、その検証を行う。すなわち、PIT-1αあるいはβの発現量あるいは変異が存在することによる未知の転写物が生じていないかを、患者および非罹患同胞の末梢血mRNAを用いて検討するとともに、exon trapping vectorを構築して検討する。また、その結果を踏まえ、下垂体機能に与える影響を、ラット下垂体由来細胞株GH3細胞を用いて、CRISPR-Cas9システムを用いて、変異ノックイン細胞を作成し、PIT-1、GH、PRL、TSHの発現をmRNAおよび蛋白レベルで解析し、野生株と比較検討する。 また、PIT-1βのみをGH3細胞でノックダウンすることで、PIT-1、GH、PRL、TSHの発現変化をmRNAおよび蛋白レベルで解析し、PIT-1βの機能を明らかとする。 さらに、学会等のコミュニティを介し、先天性下垂体機能低下症例を蓄積し、PIT-1β変異解析を行い、疾患に占める頻度と臨床像を明らかとする。
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