2016 Fiscal Year Annual Research Report
放射線ばく露ヒト造血幹細胞における放射線誘発白血病発症機構の解明
Project/Area Number |
16H06611
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
山口 平 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (00782822)
|
Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
Keywords | ヒト造血幹/前駆細胞 / 放射線 / サイトカイン / 白血病 |
Outline of Annual Research Achievements |
全ての血球を産生する「造血幹細胞」は、多分化能と自己複製能を有する生体の恒常性維持に必須の細胞であるが、その高い増殖能ゆえに放射線の標的細胞となる。造血幹細胞への放射線ばく露により細胞障害や細胞老化が起こり、場合によっては白血病発症に至ることがげっ歯類による動物実験で明らかにされている。これらをヒトで検証する事は不可能であるが、放射線と白血病発症との間に強い因果関係がある事は被ばく者などの疫学研究から明らかである一方、ヒトでの発症機構の詳細は不明のままである。本研究では、臍帯血からヒト造血幹細胞を分離精製し、放射線ばく露後の遺伝子発現変化や細胞から放出される様々な液性因子や小胞粒子の解析から、ヒト白血病発症過程の解明を目的とした。本研究の成果は、造血幹細胞への放射線被ばくがどの程度まで造血系へのリスクとなるかを含めた各個体のリスク評価確立への可能性が期待される。平成28年度は、本研究に用いるヒト臍帯血由来造血幹細胞採取源であるヒト臍帯血の安定的な確保に尽力し、社会福祉法人・函館共愛会共愛会病院から定期的にヒト臍帯血を頂いた。ヒト臍帯血から高度に分離精製したCD34抗原陽性細胞をヒト造血幹細胞として-150℃フリーザーに保存し、現在も引き続きサンプルを回収している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、計画当初に予定していたヒト臍帯血から各種解析に十分な造血幹細胞数を確保出来なかったため、分離精製した造血幹細胞は今後の解析に向けサンプル貯蔵に努めた。この点を補う目的で、0.5~5Gy照射マウスの血清中に検出されるマイクロRNA(miRNA)の網羅的解析を行い、照射線量に依存して増減するmiRNAを見出した。現在白血病発症との関連性について報告されている遺伝子との関連性について解析を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続きヒト臍帯血からヒト造血幹細胞としてCD34抗原陽性細胞を高度に分離精製し貯蔵していくとともに、各種サイトカインコンビネーション刺激下においてヒト造血幹細胞の培養を行い,可変型連続照射装置を用いた低線量放射線の連続ばく露(~200 mGy)及び高線量放射線の単回ばく露(~3000 mGy)ののち、培養過程で一部の細胞を取り出し、各段階の細胞について以下の6 項目を検討する。 ①白血球、赤血球、巨核球及び混合系前駆細胞由来コロニー形成能の測定、②未分化抗原、サイトカイン受容体及び分化抗原等の細胞表面抗原の発現解析、③アポトーシスやオートファジィ等細胞死、老化関連分子の評価、ミトコンドリア機能の解析、④微小核及びコメットアッセイ、γH2AX等の測定によるDNA損傷及び修復機構評価、⑤細胞及び培養溶液中から抽出したRNAを用いたmiRNA,mRNAなどのマイクロアレイ解析及びリアルタイムPCRによる絶対定量解析、⑥細胞及び培養溶液中から抽出したタンパク質を用いた質量分析
さらに、本研究の最終課題である放射線ばく露後の造血幹細胞の遺伝子発現変化及び細胞から放出される様々な液性因子や小胞粒子解析によるヒト白血病発症過程の解明のため、以下の2点に関する最終評価へと繋げる。さらに本研究の延長上にあるヒト造血幹細胞の血球産生能に対する放射線のリスク予測法の確立へと向けた示唆を得る。また、得られた成果を国内外の専門学会での発表や論文投稿による情報発信を積極的に行う。 ①ヒト造血システムに対して障害が危惧される線量レベルはどの程度か.またその場合の放射線感受性の個体差はどの程度か、②ヒト造血幹細胞の血球産生能に対する放射線障害や白血病発症を規定する因子は何か
|