2016 Fiscal Year Annual Research Report
視床下部栄養センシングにおけるオリゴデンドロサイト前駆細胞の機能的役割
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16H06616
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安本 有希 東北大学, 医学系研究科, 助教 (40779352)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 視床下部 / グリア / オリゴデンドロサイト前駆細胞 / 摂食行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
摂食行動は神経系により高度に制御されており、脳、特に視床下部や脳幹が個体全体のエネルギー状態、個々の組織の代謝状態を感知し、それらの情報を統合することが知られる。特に、視床下部弓状核と正中隆起に存在する血管の脳血液関門の強固性は低く、血中栄養素やホルモンが最初に到達する場所として重要である。最近レプチン受容体がアストロサイトにも発現していることが明らかにされており(Hsuchou et al., 2009; Kim et al., 2014)、ニューロンだけでなくグリア細胞も肥満研究の関心の中心になりつつあるが、グリア細胞の機能に関して不明な点が多い。本研究の大きな目的は、グリア細胞の一つであるオリゴデンドロサイト前駆細胞(Oligodendrocyte Progenitor Cells: OPCs)が視床下部の血中栄養素のセンシングにおいて果たす役割を明らかにすることである。具体的に、視床下部OPCsの活性変化が、神経可塑性や摂食行動に変化をもたらすかどうかについて、ジフテリア毒素によるOPCs特異的除去マウスにより、OPCsの活性状態を変化させるモデルを作製した。PDGFRα蛍光標識マウスを作製し、PDGFRα陽性細胞をセルソーターで分離できるようにした。OPCsと血管内皮細胞、OPCsと他のグリア細胞(アストロサイト、タニサイト)がどのような機構で連携しているのか、今後明らかにしてくために免疫組織学染色、SBF-SEM(Serial Block Face- Scanning Electron Microscopy)などによる形態学的手法による観察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PDGFRα-Creマウス(The Jackson Laboratory)とレポーターGFPマウス(研究室に具有)を交配することによりPDGFRα陽性細胞が蛍光標識されるマウスを作製した。GFPによる免疫染色の結果、期待通りにOPCが蛍光標識されていることを確認した。現在視床下部弓状核ならびに正中隆起を分離した後、セルソーター(FACS)を用いてOPCsを単離する技術を確立する一歩手前のところまで来ている。また、PDGFRα-CreマウスとCAG-floxed Neo-DTAマウス(RIKEN BRC)のかけあわせ、タモキシフェンを投与することにより、時期特異的なOPCs特異的除去を試みた。現在、それらのマウスのタモキシフェン投与量・投与期間の検討が終了し、タモキシフェン投与後のOPC減少量を算出しているところである。計画通りにいかなかった点としては、腹腔内のタモキシフェンの投与条件の検討に時間がかかった点である。2日間の投与(3mg/day)でジフテリアトキシン毒素による細胞死があまり認められず、投与量や投与期間を増やすと、死亡するマウスが出てきた。したがって、タモキシフェン投与方針を経口投与に変えることにした。経口投与条件について現在も検討中であるが、タモキシフェン30~40%のOPCの減少を見込んでいる。次にマウス初代培養OPCの樹立を行った。初代培養OPCを用いて走査型電子顕微鏡(SEM)や、ライブセルイメージングを行える技術を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、PDGFRα-CreマウスとCAG-floxed Neo-DTAマウスのかけあわせによる時期特異的なOPCs特異的除去マウスのタモキシフェン投与条件検討が計画通りに進まなかったため、若干の計画変更を行う。まず次年度の前期は、OPCs特異的除去マウスの解析を引き続き行うことにより、これまで不明であった視床下部OPCの視床下部栄養感知に対する関与を検討する。またPDGFRa-EYFPマウスからPDGFRa陽性細胞つまりOPCを特異的にソーティング(単離)し、発現する代謝関連受容体、ホルモン受容体などの違いをDNAマイクロアレイあるいはq-PCRなどの解析によって同定することにより、肥満病態へのOPCの関与を明らかにする。 PDGFRα-Creマウスにflox-ジフテリア毒素を載せたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを注入することで、OPCsを特異的に除去する計画を申請書に記載していたが、上述のPDGFRα-CreマウスとCAG-floxed Neo-DTAマウスのかけあわせによるOPCs特異的除去マウスの解析を優先させるため、施行しない可能性もある。OPCs-ニューロン、OPC-アストロサイト、OPC-タニサイトが解剖学的にどのように接触して存在しているのか、形態学的に明らかにする。従来用いてきた共焦点レーザー顕微鏡に加え、SEMを用いた3次元再構築法(FIB-SEM、SBF-SEM)、近年走査型電子顕微鏡の発達により可能となった、蛍光顕微鏡による観察と電子顕微鏡による観察を組み合わせた技術(CLEM法)から、突起同士の接触を含めた詳細な細胞間コミュニケーションの観察を試みる。
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Research Products
(2 results)