2016 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本の社会変動とマイノリティ教育の研究―1970年代以降の夜間中学に着目して
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16H06625
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
江口 怜 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 特任助教 (60784064)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 夜間中学 / マイノリティ教育 / 包摂と排除 / 学習権 / 戦後日本社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、主として戦後の夜間中学に着目しながら、戦後日本社会で周縁化された人々(マイノリティ)の被教育経験及び彼・彼女らに対する教育実践・政策に関する歴史を明らかにすることを通して、①戦後日本の社会変動とマイノリティ教育に関する歴史像を構築すること、②現代において包摂型社会を構築するための教育課題について示唆を得ることである。平成28年度は、以下の三つの課題に取り組んだ。 第一に、戦後の夜間中学及びマイノリティ教育に関連する史料調査である。この主題に関連する史料に関する先行研究は乏しく、散在する史料を地方公共図書館や所蔵する個人を対象に調査・収集を行った。特に夜間中学に関連しては、全国夜間中学校研究会や数名の研究者と協働して網羅的な史料調査に取り組み、その成果の一部を目録として公開した。 第二に、戦後の社会変動とマイノリティ教育に関する諸理論・諸研究の整理を行った。本研究が対象とする範囲は、部落解放教育、在日朝鮮人・外国人教育、障害児教育等の広範な範囲に及ぶため、研究状況の全体像をまずは把握する必要があった。特に障害児教育の分野に関しては、東京大学の小国喜弘教授の研究グループの共同研究にも参画し、情報交換を行った。 第三に、次年度に向けた研究体制の整備である。特に、全国的な史料調査と並行し、マイノリティ教育との関係の深かった関西方面の夜間中学の現・旧教員との情報交換をった。またマイノリティ教育に造詣の深い研究者との研究交流や聞き取りも実施し、本格的な研究遂行の基盤づくりを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
夜間中学に関連する史料の全国的な網羅的調査とその公開、戦後の社会変動とマイノリティ教育に関する諸理論・諸研究の整理、次年度の研究体制の整備という当初の目標については、計画通り遂行することができた。さらに、本年度は関西方面のマイノリティ教育(解放教育)の研究に1970年代当初からコミットしてきた研究者とのつながりを構築することができたため、当初の計画以上に順調に研究を遂行することができた。ただし、マイノリティ教育に関連する諸研究と戦後日本の社会変動の関係の整理に関しては、対象となるものが広範に及ぶため、その全体像の把握においては次年度も引き続き作業を進める必要があることが明らかになった。上記のような状況から、総合的に見れば研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、マイノリティ教育に関連する諸研究と諸事例の調査を進めながら、それが戦後日本の社会変動とどのように関り合い、また夜間中学という空間にどのような影響を与えたのかを踏み込んで検討したい。そのためには、一方で文献研究を継続しながら、個別の学校や地域を選定して具体的な事例の検証を行う必要がある。本年度は、本研究で取り上げる事例の候補としていた大阪・兵庫の夜間中学に対して史料調査を行うとともに、関係者(現・旧教員、卒業生等)に対する聞き取り調査も可能な範囲で実施したい。また、全国夜間中学校研究会との良好な関係を継続し、史料整理やその成果報告においてアウトリーチ活動を実施予定である。
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