2016 Fiscal Year Annual Research Report
固体酸化物形燃料電池の設計を可能とする双方向マルチスケールシミュレータの開発
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16H06629
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
許 競翔 東北大学, 金属材料研究所, 特任助教 (00779746)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 多孔質構造 / 大規模分子動力学 / 固体酸化物形燃料電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、高効率・高耐久性を併せ持つ固体酸化物形燃料電池の電極材料を理論的に設計するために、作動中の固体酸化物形燃料電池の電極材料における双方向マルチスケール現象を解明可能なシミュレータの開発及び、双方向に影響している各スケールでの現象の解明に関する研究を行った。固体酸化物形燃料電池の電極材料において、ナノスケールでの化学反応がマイクロスケールの多孔質構造に影響を与える。その影響を解明するために、これまで開発済みのMPI並列による化学反応が扱える分子動力学シミュレータを発展させて、ナノスケールでの化学反応に伴うマイクロスケールでの多孔質構造の変化を解明可能な多孔質シミュレータを開発した。開発した多孔質シミュレータを用いて、水蒸気・酸素分子・水素分子などの作動雰囲気において、その雰囲気によるニッケルの多孔質構造変化のメカニズムを明らかにした。このシミュレータにより、作動中の固体酸化物形燃料電池において、ナノスケールの化学反応を伴う電極材料である多孔質構造の変化メカニズムの解明が可能になると期待できる。さらに、開発したシミュレータを活用し、その作動雰囲気によって、ニッケル表面及び多孔質構造変化による応力などを解析した。そのニッケルと水蒸気の化学反応により、ニッケル表面原子の電荷移動によってクーロン力が強まり、圧縮応力が発生したことを明らかにした。このシミュレータにより、多孔質構造の変化と応力による亀裂進展プロセスの予測が可能になると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、作動中の固体酸化物形燃料電池の電極材料において双方向に絡み合ったマルチスケール現象の1つであるナノスケールにおける化学反応に伴うマイクロスケールにおける多孔質構造の変化を解明可能な多孔質シミュレータの開発に成功した。そして、開発した多孔質構造シミュレータを活用し、水蒸気・酸素分子・水素分子などの作動雰囲気において、ニッケルの多孔質構造の変化メカニズムを明らかにした。これにより、作動中の固体酸化物形燃料電池において、ナノスケールの化学反応に伴って、多孔質構造が変化するメカニズムの解明が可能になった。さらに、水蒸気環境中における水蒸気との化学反応による電荷移動によってクーロン力が強まり、圧縮応力が発生することを明らかにした。以上のシミュレータにより、固体酸化物形燃料電池の電極材料においてナノスケールでの化学反応を伴う応力、電荷変化などの解析が可能になった。以上により、当初の計画通り、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、ナノスケールの化学反応の影響を考慮可能な多孔質シミュレータを開発し、水蒸気・酸素分子・水素分子などの作動雰囲気下において、ニッケルの多孔質構造変化のメカニズムとニッケル表面及び多孔質構造変化による応力の変化を明らかにした。本課題の目的を達成するために、ナノスケールでの化学反応が亀裂の生成に与える影響の理解が重要である。そのため、次年度は、今年度の内容に引き続き、作動中の固体酸化物形燃料電池の電極材料におけるナノスケールでの化学反応がマイクロスケールでの多孔質構造の変化及び応力による亀裂進展メカニズムを解明する。具体的には、今年度で開発したナノスケールの化学反応の影響を考慮可能な多孔質構造シミュレータを活用し、固体酸化物形燃料電池の電極材料である多孔質構造の変化及び応力による亀裂進展メカニズムを明らかにする。
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Research Products
(5 results)