2016 Fiscal Year Annual Research Report
異常なマルテンサイト変態を示す新規CoV系形状記憶合金の開発
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16H06632
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
XU XIAO 東北大学, 工学研究科, 特任助教 (20781389)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 形状記憶合金 / マルテンサイト変態 / 磁気転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度ではCo-V-Ga3元系合金について、マルテンサイト変態の有無、結晶構造および磁気特性について調査を行った。 Co2VGaはホイスラー構造を示す強磁性体であり、約330Kにおいてキュリー温度を示す。ただし、Co2VGaの化学量論組成ではマルテンサイト変態が得られなく、形状記憶合金としては利用できない。本研究では、CoxV(100-x)/2Ga(100-x)/2(以降V:Ga=1:1断面)およびCo50V(50-x)Gax(以降Co50断面)、2つの断面について系統的に研究を行った。 V:Ga=1:1断面において、Co-richにすることで、マルテンサイト変態を得ることに成功した。透過電子顕微鏡およびその場X線回折等の手法を用い、L21ホイスラー母相からL10マルテンサイト相へのマルテンサイト変態であることが明らかとなった。また、マルテンサイト変態が250~500 Kと、幅広い温度範囲において出現し、組成依存性も比較的小さく、応用上望ましい特性であると言える。ただし、マルテンサイト変態の出現に伴い、母相のキュリー温度が大幅に低下し、磁気転移に伴うマルテンサイト変態時は得られなかった。 Co50断面においては、V-richにすることで、V-rich2相になる直前にマルテンサイト変態を得ることが出来た。マルテンサイト変態が室温付近において出現したが、V:Ga=1:1断面と同様に、母相のキュリー温度以上であった。また、Co断面におけるマルテンサイト変態を示さない母相合金の磁気特性を調査したところ、母相のキュリー温度と自発磁化のいずれでも化学量論組成にて最大値を示す傾向が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マルテンサイト変態を示すCo基ホイスラー合金が少ない中で、Co-V-Ga3元系合金においてマルテンサイト変態を得ることに成功した。また、3元系合金について系統的に研究を行い、マルテンサイト変態および磁気特性の組成依存性がある程度理解でき、今後3元系の中での研究指針および4元系へと拡張に必要な基礎データを得ることが出来た。また、3元系で得られた結果は投稿論文に掲載し、国内会議にでも発表を行い、研究がおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度の研究ではCo-V-Ga3元系合金において、マルテンサイト変態を得ることに成功したが、今まで磁性形状記憶合金のように、マルテンサイト変態に伴う磁気相転移、およびCoCr基合金におけるリエントラント変態のような挙動はまだ得られていない。今後は主にこの2つのところに焦点を置き、研究を進める。 1. 磁気相転移に伴うマルテンサイト変態の実現 マルテンサイト変態に伴い、強磁性→常磁性、もしくは常磁性→反強磁性の磁気転移が現れると、磁場の印加による磁場誘起相転移が実現される。これは磁場駆動アクチュエータ等、応用上重要な特性だけではなく、磁場誘起相転移の臨界磁場を調査することで、マルテンサイト変態の熱力学的解析が可能となる。今年度3元系合金の調査において、マルテンサイト変態温度が母相キュリー温度以上である結果となったが、極めて近いところに現れており、さらなる組成制御によってマルテンサイト変態がキュリー温度を下回る可能性を探る。 2. リエントラントマルテンサイト変態の実現と熱力学的調査 Co-V-Ga3元系ではまだリエントラントマルテンサイト変態が見られていない。また、今年度の研究結果に基づくと、母相のキュリー温度が大幅低下するため、3元系においてリエントラント変態を得ることが難しいと考える。したがって、H29年度ではGeやSi等の第4元素を添加し、母相キュリー温度を下げずにマルテンサイト変態の得ることを方針とし、リエントラント変態の出現を目標とする。
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