2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H06642
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白井 剛志 東北大学, 医学系研究科, 助教 (20646997)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 内科 / 免疫学 / 循環器 / 膠原病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、以下の実験を行った。 (1)抗膜蛋白A、B抗体価測定系の樹立。膜蛋白A、BのcDNAをIRES-GFPベクターに挿入後、レトロウイルスを用いてラット骨髄腫細胞に移入することで、膜蛋白AまたはBを永続的に細胞表面に過剰発現する細胞を作成した。膜蛋白A、B発現細胞、非発現細胞両者を、希釈ヒト検体血清(1次抗体)、PE-抗ヒトIgG抗体(2次抗体)にて染色し、フローサイトメトリーにて蛍光強度を測定した。両者の相対的平均蛍光強度を算出し、基準抗膜蛋白A、B抗体より作成した標準曲線を用いて自己抗体活性を測定した。 (2)健常人、高安動脈炎、血管炎、膠原病患者での膜蛋白A、B抗体活性の測定。研究方法(1)で記載した系を用いて、高安動脈炎患者、他血管炎患者(巨細胞性動脈炎、結節性多発動脈炎、ANCA関連血管炎など)、他膠原病患者(SLE、シェーグレン症候群、筋炎、強皮症など)、健常人の血清中の抗膜蛋白抗体価を測定した。各々の群における各自己抗体の出現頻度、疾患活動性や臨床パラメーターとの相関の有無について解析した。 (4)(3)抗膜蛋白A、B抗体のリコンビナント蛋白による阻止試験。(1)で樹立した測定系に異なる濃度のリコンビナント蛋白を添加し、抗膜蛋白A、B抗体の結合の特異性を確認した。 (5)血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、免疫細胞における膜蛋白A、B発現の解析。 膜蛋白Bは血管内皮細胞の他にも、マクロファージで重要な役割を果たしている事が知られている。このことより、抗膜蛋白A、B抗体が血管内皮細胞以外の細胞に作用することも十分に考えられるため、大動脈内皮細胞、腎糸球体内皮細胞といった内皮細胞の他に、血管平滑筋細胞、末梢血単核球、マクロファージにおいて、フローサイトメトリー、定量的PCRやウェスタンブロッティングを用いて細胞の膜蛋白A、B発現を定量を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験の概要(1)に記したように、膜蛋白A、BのcDNAをラット骨髄腫細胞に移入することで、恒久的に膜蛋白AまたはBを発現する細胞を作成した。膜蛋白発現細胞と非発現細胞に対する検体血清の結合をフローサイトメトリーにて測定し、平均蛍光強度差より抗膜蛋白A、B抗体価を測定した。健常人の平均値+2SDカットオフとしたところ、高安動脈炎では抗膜蛋白A抗体は38.4%で、抗膜蛋白B抗体は28.1%で検出された。興味深いことに、抗膜蛋白B抗体は他血管症候群である顕微鏡的多発血管炎でも出現がみられ、高安動脈炎、顕微鏡的多発血管炎両者における血管障害への関与が考えられた。抗膜蛋白A、B抗体各々を有する新規発症高安動脈炎患者において治療経過での抗体価の変化を観察し、治療に応じて抗体価が低下することを確認した。同定された自己抗体の病原性を検討するために、血管内皮細胞や他免疫細胞における発現の検討を行い、膜蛋白A、Bともに血管内皮細胞に発現していることを確認した。また膜蛋白AはT細胞の一部で、膜蛋白Bは単球における発現を確認した。現在は、これら自己抗原の血管内皮細胞や免疫細胞における病的意義をin vitroで検討している。具体的には、膜蛋白A、Bを介したシグナリングによるサイトカインや接着分子の発現変化を血管内皮細胞において測定している。自己抗体が血管内皮細胞を介し、向炎症性または向血栓性にどのように関わるかの検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
抗膜蛋白A抗体は特異的に高安動脈炎で出現しており、高安動脈炎の疾患特異的な自己抗体となりうる。治療介入後の抗膜蛋白A抗体価を継続して測定しているが、治療介入により抗体価の減少が認められることから、疾患活動性の判定に応用できる可能性について検討を行っている。また、抗膜蛋白A、B抗体陽性者の臨床的特徴の解析も並行して行っている。基礎的検討としては、これら自己抗体の病態への関与をin vitroにおいて進めている。具体的には、抗膜蛋白A、B抗体を血管内皮細胞と共培養することにより、血管内皮細胞機能(内皮細胞活性化(前炎症性サイトカイン分泌、接着分子発現、白血球遊走能)や血管新生作用)直接的な細胞傷害性、アポトーシス誘導の検討を行う予定である。また、抗膜蛋白A抗体による凝固反応への影響の検討、抗膜蛋白B抗体によるマクロファージ機能の解析を予定している。ヒト・マウス大動脈組織における膜蛋白A、Bの発現を蛍光染色にて検討し、局在を確認し抗膜蛋白A、B抗体によるin vivoでの病原性の検討も行いたいと考えている。
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