2016 Fiscal Year Annual Research Report
原子力災害対策の観点を踏まえた原子力安全規制法制の再構成
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16H06649
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
清水 晶紀 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (20453615)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 原子力安全協定 / 原子力安全規制における避難計画の位置づけ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度である平成28年度は、日米の先行研究や行政資料を収集し、日米の原子力法制の理論的基礎を整理するとともに、日本における原子力安全協定の役割や、アメリカ原子力安全規制における避難計画の位置づけを検討した。その成果の一部は、平成28年9月に日本原子力学会で、平成29年2月にJapan Society of Bostonで報告している。 また、原子力安全協定をめぐる国内インタビュー調査としては、静岡県の浜岡原子力発電所にターゲットを絞り、静岡県庁、御前崎市役所、中部電力静岡支店、浜岡原子力発電所を訪問して調査を実施した。浜岡原子力発電所をめぐる原子力安全協定は、立地町のみならず隣接町を当事者に含む点、いわゆる「事前了解」規定がない点など、非常に特徴的なものであったためである。結果的に、原子力安全協定において防災・災害対応という趣旨は希薄である点、福島事故の前後で協定の位置づけが全く変わっていない点など、インタビューで初めて把握できた収穫が多くあった。 さらに、当初は平成29年度に予定していたアメリカでの調査を実施することができた。アメリカ原子力安全規制における避難計画の位置づけについて、ニューヨーク州のインディアンポイント原発を訪れるとともに、同原発の避難計画をめぐる紛争の当事者であるIPSEC(Indian Point Safe Energy Coalition)のメンバーと顧問弁護士にインタビューをする機会を得た。インタビューにおいては、(紛争のもう一方の当事者であるNRCやEntergy社への補充調査が必要であると考えているが、)実効的避難計画の策定というNRC規則上の原子炉稼働要件が機能不全に陥っている現状や、NRCの広範な行政裁量がその主要因となっている点、インディアンポイント原発の廃炉決定に多様な要素が影響している点など、多くの情報を把握することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日米の先行研究や行政資料の収集は、比較的順調に進めることができた。 原子力安全協定の実態をめぐる日本国内のインタビュー調査については、平成28年度の研究費交付時期が遅かったこともあり、浜岡原発関連のものしか実施できなかったが、県・市町村・事業者すべての見解を伺うことができ、その異同を把握できたことは大きな収穫であった。 国内インタビュー調査が予定通りには進まなかった一方で、当初平成29年度に予定していたアメリカ調査を実施することができ、インディアンポイント原発をめぐる最新の情報や、避難計画をめぐる紛争の資料等を収集できたため、インタビュー調査に関する研究計画全体としては、おおむね順調に進展していると考えている。 研究成果については、日米両国で報告の機会を得ており、文章の形での成果公表ではないものの、研究初年度としては成果公表の面でも順調であったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、日米の行政資料や先行研究を読み込み、現行制度の理論的基礎や制度内容を整理分析する。 また、引き続き、国内の地方自治体や原子力事業者に対して、原子力安全協定の実態についてインタビュー調査を実施する予定である。①特徴的な原子力安全協定を有している地方自治体が当該地域に存在するか、②当該地域において原子力安全協定に基づく同意をめぐる紛争事例があるか、③原発立地地点から隣接県までの距離が近いか、という三点からは、現時点では、川内原発(鹿児島県)、高浜原発(福井県)、柏崎刈羽原発(新潟県)、東通原発(青森県)を重点調査地域と考えている。なお、高浜原発については京都府舞鶴市、東通原発については北海道函館市も調査対象として重視している。 アメリカでのインタビュー調査については、行政機関(NRC、FEMA、州、地方自治体)を中心とする補充調査を行うことも考えている。 最後に、平成29年度は本研究の最終年度であり、研究成果を、学会・研究会報告や論文の形で逐次公表していく予定である。現時点では、平成29年6月10日の環境法政策学会(於横浜国立大学)で研究報告を担当することが決まっている他、年度末に刊行が予定されている論文集に成果を掲載する予定である。
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