2016 Fiscal Year Annual Research Report
曲率を制御した足場材料によるin vitro 3次元微小血管新生モデルの構築
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16H06686
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 治子 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (70775767)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 微小血管モデル / 血管新生 / 血管曲率 |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度は、足場材料の曲率によって、血管内皮細胞の成長因子に対する血管新生応答を制御可能であることを証明することを目的とし、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)を用いて様々な曲率(大きさ、向き)を持った微小血管を作製し、血管内皮成長因子(VEGF)に対する応答を調べた。具体的には、PDMSでデバイスを作製し、そこに足場となるコラーゲンゲル流路を作成した。この流路を作製した際に、コラーゲンゲル中に挿入するニードルの直径を120, 200, 300 マイクロメートルと変化させ、直径の異なる微小血管を作製した。作製した流路へHUVECsを導入し、ゲル表面に接着・伸展させて管腔構造を持つ微小血管を形成させた。この微小血管に、血管内皮細胞の増殖と血管新生を誘導する血管内皮成長因子(VEGF)を0または50 ng/mLとなるように添加し、7日間培養して時間経過による変化を明視野顕微鏡および、光コヒーレンストモグラフィを用いて観察した。すると、血管径が小さい直径120, 200 マイクロメートルの微小血管の方が、より血管を新生しやすいことが明らかとなった。培養後、パラホルムアルデヒドで固定、蛍光修飾ファロイジンで細胞骨格のアクチンを染色し、共焦点レーザー顕微鏡で新生血管の管腔構造を観察し、各観察法にて得られた画像を比較した。形成された新生血管は、中に管腔を有する生理的な血管新生であることが確認できた。さらに複数(n=3)の微小血管で新生血管の全体的な長さおよび内腔の大きさを経時的に測定した。また、血管の直径および体積も経時的に測定し、血管の直径(=曲率)と血管新生および血管径の変化の関係を比較したところ、血管径が小さいほど、血管径および体積の変化率が高いことが明らかとなった。本知見により、曲率によって血管内皮細胞の成長因子に対する血管新生応答が変化することが証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標に掲げた「足場材料の曲率によって、血管内皮細胞の成長因子に対する血管新生応答を制御可能であることを証明する」ことは、予定通り遂行でき、次年度の基盤知見となる、血管新生に適した曲率の情報を得ることができた。加えて、光コヒーレンストモグラフィ観察技術と組み合わせることで得たモデルシステムと血管新生の定量評価の研究成果を、Scientific Reports誌に投稿・受理された。これは、計画よりも詳細な研究データを得ることができたためであり、本研究は計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、1年目で血管新生に適した曲率であると証明したより小さい直径(120 マイクロメートル)の微小血管曲率を使って、in vitroモデルの血管新生を自在に制御できるか検討し、さらにこのシステムを用いることで生理的な血管新生現象を様々な血管内皮細胞でモデル化できるか確認する。曲率を利用した血管新生部位を空間的に制御可能なin vitroモデルの作製と、構築したin vitro 3次元血管新生モデルの有用性評価の2項目で検討する。 具体的には、血管新生に適した高い曲率を用いて、微小血管を取り巻く足場材料の幾何学的な形をデザインし、血管新生部位を空間的に制御できるin vitro血管新生モデルを構築する。基本となる微小血管は血管を新生させないように大きな血管径(>300 マイクロメートル)に設定し、流路の一部が血管新生に高い曲率を持つような流路を設計する。この流路はsugar waxで凹凸をつけたニードルを用いて作製する。このゲル流路に HUVECsを導入し、微小血管を形成させ、VEGFを添加して、高い曲率を配置した部位から血管が新生するか検討する。 次に、先端細胞 (tip細胞)と柄細胞 (stalk細胞)の遊走によって新生していくため、本モデルの血管新生が同様に起こっているか、新生部位をタイムラプスで観察すると共に、tip細胞とstalk細胞を免疫染色して確認する。また、血管新生にはVEGFのみでなく、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)が大きく関わっていることから、VEGFとMMP共存下で血管新生が活性化(促進)するか、さらに、MMP共存条件においても曲率による制御が可能か検討する。さらにこの曲率を利用したin vitro血管新生モデルが他の血管内皮細胞に対しても有効か、ヒト冠状動脈内皮細胞(HCAECs)、ヒト肺動脈内皮細胞(HPAECs)を用いて評価する。
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