2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H06702
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 雄一 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 特任研究員 (80779538)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 政治学 / 日本史 / 陸奥宗光 / 競争 / 利益 / 政策決定過程 / 民主政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
近代日本政治において競争や利益の観念がどのように捉えられ、政治エリートのなかで実践されたのかを、陸奥宗光を中心に分析して明らかにするため、まずは日常的に刊本や東京近郊の資料館・図書館で資料調査・閲覧・収集を行った。主な例としては、国立国会図書館憲政資料室の「陸奥宗光関係文書」、神奈川県立金沢文庫の陸奥宗光ノート、東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センターの新聞『寸鉄』、『世界之日本』などである。また、2016年9月に大阪府公文書館で大坂勤務時代の陸奥宗光関連文書を閲覧・複写した。2017年1月にはイギリス(国立公文書館、議会文書館、ケンブリッジ大学)で資料調査を行った。陸奥におけるイギリスの政治制度・政治思想受容を理解するうえで重要な資料の発見があり、帰国直前に所在が判明して未見のものもあるため、平成29年度に再度訪問する予定である。本年度は関連諸分野の知見を含め研究の土台をつくっているところであり、本研究のテーマを主題とする論文作成には着手していないが、当初の申請通り2017年の日本政治学会研究大会での報告に応募し、採択された。報告時のフィードバックなども踏まえ、平成29年度の後半に研究をまとめていきたい。 本年度の研究におけるもう一つの柱である、近代日本外交における陸奥の役割や利益の観念については検討をほぼ終え、『帝国日本の外交 1894-1922 なぜ版図は拡大したのか』(東京大学出版会、2017年3月)にその研究成果を取り入れた。本研究応募時に記載した研究成果の国際的な発信という点では、2017年8-9月にリスボンで開かれるEuropean Association for Japanese Studies研究大会への報告応募を行い、採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
陸奥宗光自身の基本的な資料については、当初申請したものの閲覧・複写をほぼ完了した。ただし関連する資料や諸家書簡中の陸奥発書簡は無数にあり、その点については次年度の課題として残っている。 国内の新規資料調査については、少なからず興味深い資料に行き当たったが、やや断片的であり、今後のさらなる調査と総括的な分析が必要となっている。 当科学研究費補助金交付時の申請書には、新出かつ重要な資料に行き当たるかどうかは調査を実施してみるまでわからない面があるため、研究・調査はまずは所在を把握済みの資料を中心に予定を組み立て、新出資料の発見に過度な期待をしない旨を記したが、イギリスでの調査は予想以上に重要な新出資料に行き当たる可能性を感じさせた。したがって、資料発掘に力を入れることになり、研究が順調に進展・深化する一方で、完成までに取り組むべき課題も増えている。
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Strategy for Future Research Activity |
根本史料については既に多くのものに目を通したが、今後も引き続き日常的に読解や分析を進めていく。また関連する資料や諸家書簡中の陸奥発書簡は前述の通り無数にあり、重要と思われる資料群でも、所在はわかっているが目を通していないというものがある。主に刊本か東京近郊の図書館・資料館で閲覧可能な資料であるので、その点は今年度、早期に確認したい。 資料調査は、まず国内で和歌山・大坂・兵庫在勤時代の分析を行う。海外では、前述のイギリス滞在時代の資料を確認するのに加えて、アメリカ滞在・在勤期の資料発掘を目指す。 研究報告は日本政治学会及びEuropean Association for Japanese Studiesの研究大会での報告に加えて、もう何件か行おうと考えており、各所で得られるフィードバックを踏まえて、平成29年度後半以降に陸奥宗光に即したものとより一般的・構造的な分析双方をまとめていく。
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