2016 Fiscal Year Annual Research Report
言語の多様性・異質性と国際移民のスキル・トランスファーに関する経済分析
Project/Area Number |
16H06703
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 万理子 東京大学, 空間情報科学研究センター, 講師 (30779335)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 言語 / エスニシティ / スキル・トランスファー |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度に行った口頭発表は,本研究課題(言語の多様性・異質性と経済活動に関連する研究)で実施する予定である以下の二つのプロジェクト, (i)言語的多様性・異質性が経済発展に対して与える影響を,国際比較しながら実証的に分析する. (ii) 国際移住に伴うskill transferに纏わる言語的摩擦と,移住に関する意思決定との関係を,空間経済理論的に分析する. のうち(i)に対応した内容に基づいた実績である.特に,言語的異質性から生じるベネフィットを表した指標(国別の言語的多様性の指標)と,コストを表した指標(国別の言語的距離の指標)を作成し,被説明変数として一人当りGDPを採用した回帰分析に両指標を含めることで,コストとベネフィットの各々から生じる効果を分離することを試みたものであり,それらの実証分析を発表したのが,28年度の実績である.また,同じ分析の枠組みの中で,国際的な連携の取りやすさの指標として,英語までの言語的距離の指標も分析に含めたが,その指標は,移民人口比率と同様の効果をもたらしていることが分かった.しかし,本プロジェクトの研究発表をする中で,様々な内生性への対処など課題も多く指摘されたため,それらの問題への対応・改善の必要性が強く認識された. また,プロジェクト(ii)に関しては,当初よりもはるかに進展が早く,解析的な分析結果は現時点でかなり多く得られており,それらはまだ公開されてはいないものの,発表しても差し支えない段階まで分析が進んでいる.プロジェクト(ii)に関しては,以下の進捗状況のセクションにて詳述する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で実施する予定である,プロジェクト(i)(ii)に関して,当初,プロジェクト(ii)をプロジェクト(i)の後に行う予定であったが,昨年度に予想以上に,プロジェクト(ii)が進展したため,予定を変更して,プロジェクト(i)とプロジェクト(ii)の遂行順序を変更した.プロジェクト(ii)については,使用言語が異なるという設定のもと,労働力の国際移転に伴う摩擦費用を導入した空間経済モデルを用いることで,高スキル労働者の国際的な空間分布を解析的に分析した.現時点で解析的に求められた,端点での安定均衡に関する結果から, 一定の経済学的示唆をすでに得ている.また,摩擦費用が移住先に応じて非対称的な場合の解析的な考察も行い,これについても一定の結果を得ている. プロジェクト(i)については,実証研究を引き続き行ってはいるものの,内生性の克服などの課題が残ったままである.
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Strategy for Future Research Activity |
想定外に進捗状況の良かったプロジェクト(ii)に関しては,本年度は,解析的には明確な結果の得られなかった,内点均衡の安定性に関して,数値シミュレーションを行うことで,先行文献との比較も含めて,論文として投稿レベルまで引き上げる.また,場合によっては,異なる設定下での理論的頑健性のチェックを数値シミュレーションによって行うことも検討している.加えて,ワークショップや学会での発表を積極的に行い,国際誌に投稿する水準まで内容を引き上げる. 一方,28年度の進捗状況の芳しくなかったプロジェクト(i)に関しては,引き続き,内生性への対処方法を検討するとともに,精緻化された言語的な多様性の指標の作成,および,社会経済的な諸側面に対してどのような影響が与えられるのか,実証的に明らかにすることを目指す.
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Research Products
(4 results)