2016 Fiscal Year Annual Research Report
労働市場と労働組織の相互作用-近代鉱山企業における技術と情報と組織
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16H06705
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 真世 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 助教 (20782311)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 推薦採用 / referral hiring / 間接管理組織 / 労働者管理体系の変遷 / 近代化に伴う労働組織の変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.Society of Labor Economists 21st Annual Meetingにおいて1900年代に操業された炭鉱企業の雇用契約書を用いた推薦採用の効果について議論した研究の発表を行った(査読あり、ポスター発表)。推薦採用については友人や親戚を通じた紹介によって雇用関係を締結すること、という認識は多くの研究者にあるが、従業員が紹介、保証して入職させることについてはあまり認識がないようで、発表をしたことによって、その他の部分でも論文を構成する上で、強調すべき点や整理すべき点が明確となった。理論的な予測の上で、雇用契約書をデータベース化して実証分析を行っている点については興味深い印象を持っていただけたようであった。 2.前年度に発表した「過渡期炭鉱業の労働市場と労働組織-筑豊麻生炭鉱における鉱夫の募集と管理-」、『社会経済史学』、第81巻3号、127-149頁(査読あり雑誌論文)に対して、第7回社会経済史学会賞を受賞した。 3.2016 Asia Meeting of the Econometric Societyにおいて1と同様の研究について発表した(査読あり、口頭発表)。研究の手法や見せ方、データについて興味深いと感じてくださったようで、コメントを多くいただくことができた。その中で、注意すべき点や補足の必要な点もご教示いただき、有意義な学会報告となった。 4.九州大学へ資料調査を行った。九州石炭礦業史資料目録に掲載されている史料についても、目録にないが資料館に所蔵されている史料についても、多く撮影することができた。企業内部の構図を推測可能となるような史料を発見するなど、今後の研究に大いに役立つものがあった。その他興味深い史料を多く撮影することができ有意義な資料調査となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、2つの国際学会において研究発表を、国内の研究会においても数回の発表を行い、九州大学へ資料調査へも赴くことができたが、年度後半において任務先の授業準備が予想以上に比重の高いものとなり、論文の推敲や史料分析が当初の予定よりも遅れたと感じている。また、参加及び発表を検討していた国際学会に、日程の都合上参加できなくなったことも、このように回答した理由の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
史料分析を進める。データベース化の待たれている鉱夫の勤怠を記録した史料は、比較的長期間にわたって記録されており、分析するだけでも研究史的に大いに意義のあることであり、長期間にわたる労働者個人のデータは、現時点で進めている研究、さらには今後の新たな研究の展開に大きく寄与するものであり、早急に進める。また、論文の推敲を進め、国際的な学術雑誌へ投稿する。また、研究計画書の通り、九州大学附属図書館付設記録資料館への資料調査は引き続き数回行う。前回の資料調査でも、目録にまとめられていないものはもちろんのこと、目録で確認できるものの中でも、タイトルだけでは想像ができないものもあり、今後も記録資料館に赴き、資料調査をする必要があると感じたからである。
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