2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H06715
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
衣川 智弥 東京大学, 宇宙線研究所, 特任研究員 (90779159)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 重力波 / 連星進化 / 初代星 / ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
重力波観測のメインターゲットはコンパクト連星の合体である。コンパクト連星とは、星が寿命を終え超新星爆発や重力崩壊を起こしてできるコンパクト星(ブラックホール(BH)、中性子星(NS))同士の連星である。連星は重力波放出により軌道が縮まり、いずれ合体する。重力波によるエネルギー放出は弱いため、合体までのタイムスケールは数億年から宇宙年齢以上と非常に長い。したがって、宇宙初期にできたコンパクト連星でも現在で合体するものがあるはずである。よって、重力波観測において宇宙初期にできたコンパクト連星の寄与が効いてくると考えられる。 宇宙初期へ行くほど星の金属量は低くなる。星の金属量が低くなると星の進化において次のような違いが出ると考えられている。(1)恒星風による質量損失が効かなくなる。(2)星中心のコアが大きくなる。(3)星の半径が小さい。これらの違いを考慮し、連星の進化を解く必要がある。連星の進化は単独星よりさらに複雑で、星同士の質量の交換や超新星爆発による軌道の変化などの連星相互作用がある。連星相互作用により、連星の質量及び軌道が変わる。場合によっては超新星爆発により連星そのものが解体してしまう。低金属星では星の特徴が現代の星と異なるため、連星相互作用の発生条件や振る舞い、連星の解体しやすさも変化すると考えられる。よって、連星相互作用の金属量依存性も考慮することになる。 このような寄与を考えた結果、重力波観測において観測されるNS-BH連星がどの様な特徴をもつか、また質量に宇宙初期起源のものと現在のものとで違いがあるのかを調査し論文として出版した。宇宙初期の初代星起源のものはそれ以降のものよりも数倍重い特徴をもつことがわかった。また将来計画であるDECIGOでは宇宙初期の連星BHの重力波を観測できることを示し、GW150914のような重い連星BHの起源が示せることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宇宙初期と現在の星起源のコンパクト連星の違いを調べる第一歩として今後観測が期待される中性子星ーブラックホール連星において、宇宙初期から現在までの間にどの様な変遷があるかを調べた。本研究により、金属量によって質量分布が異なることと、各赤方偏移での合体率を示す事ができた。 また、将来計画であるDECIGOへのサイエンスターゲットへの提言も行い、論文として出版した。 研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は重力波観測の結果が出てくることが期待されるのでそれとの比較を行う。 また、計算手法自体も細部をアップデートしより詳細な議論ができるようにする。
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