2016 Fiscal Year Annual Research Report
カシ類とそれに特異的な内生菌の親和性をSSRおよび菌特異的マーカーにより解明する
Project/Area Number |
16H06737
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松村 愛美 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (40747565)
|
Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
Keywords | 内生菌 / Tubakia / DNAマーカー / 群集構造 / 宿主選好性 |
Outline of Annual Research Achievements |
Tubakia属菌のカシ類内の宿主選好性および地理的分布を明らかにするため、カシ複数種が共存する森林で内生菌の分布調査を行い、Tubakia属菌を得た。東京都八王子市の高尾山,千葉県鴨川市の東京大学千葉演習林,静岡県賀茂郡南伊豆町の東京大学樹芸研究所、鳥取県鳥取市、京都府福知山市内、宮崎県綾町のカシ天然林にてカシ類7種の内生菌を組織分離法により調査した。さらにT. dryina、T. subglobosaおよび未知種5種、計7菌種の菌糸成長を10~40℃で比較し、菌種間の培養特性を検討した。またカシ類すす葉枯れ病をはじめ数種がブナ科樹木の葉枯性病原菌としても報告されているため、未記載4菌種を含む内生菌Tubakia spp.の病原性の有無を明らかにし、それらの分離傾向と病原性との関係を考察した。 分離試験の結果、Tubakia属菌の優占を示した。また内生菌組成には宿主樹種の違いが最も強く影響した。宿主選好性の違いにより、Tubakia属菌は選好性の強い5種、選好性の弱い3種に分けられた。西日本では他調査地に比べTubakia属菌の分離頻度が低いなど群集組成の地域差も見られた。宮崎県綾町では同じブナ科のマテバシイ、シリブカガシ、スダジイ、ツブラジイについても調査したところ、同所的に生育する個体でもTubakia属菌は全く分離されなかった。 菌糸成長速度は最速のT. dryina と最遅のT. sp.4では5倍の差異があった。ジェネラリストほど成長が速い傾向にあり宿主選好性の違いとよく対応していた。病原性については、まず無傷区では、どの菌種も病斑を形成しなかった。一方、有傷区では宿主選好性の高い種は病原性が弱い傾向にあった。また樹種による病原性の明らかな差異はなかった。 これまでの関東での調査結果と比較し西日本の調査ではTubakiaの優占度が低い傾向にあり、これが地域変動か季節変動か判別できないので、追加調査を行うかを検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題の実行期間中に妊娠に伴う悪阻で思うように野外調査や実験が行えなかったため、研究に遅れが出ている。またTubakia属菌の多くが培養に時間を要し、また二次代謝物質を生成しているためか純度の高いDNAの抽出が極めて困難である。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画を遂行し、特にTubakia属菌の培養や抽出について様々な方法を試行する。
|