2016 Fiscal Year Annual Research Report
細胞運命追跡法によるカハール介在細胞の可塑性と分子機構の解明
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16H06740
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梶 典幸 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (20779318)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | カハール介在細胞 / 消化管運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は消化管運動のペースメーカー細胞であるカハール介在細胞(ICC)の障害と再生の過程を明らかにすることを目的としている。【ICCの単離と遺伝子発現解析】ICCの遺伝的解析を実施するために、FACSによるICCの単離を行った。単離細胞を用いて逆転写PCRを実施した結果、ICCマーカーであるc-Kit遺伝子発現の濃縮が認められ、ANO1などの他のICCマーカーの発現も認められた。以上よりFACSによるICCの単離が成功していると考え、遺伝的解析によりICCに関連のある成長因子の候補を絞り込む。【ICCの脱分化マーカー候補の探索】炎症刺激によりICCは機能だけでなくc-Kitの発現を失う(脱分化)と考えられるが、このような障害後のICCを検出するマーカー分子は存在しない。そこで、脱分化ICCを検出するマーカーとしてICC特異的抗体(抗原不明)とされるAIC抗体に着目した。炎症時の消化管筋層において他のICCマーカーに比べて、AIC抗体に陽性を示す細胞が比較的に維持されていた。そこでAIC染色性を正常組織にて詳しく検討した結果、 節層間神経叢において全てのc-Kit陽性細胞はAIC抗体に陽性を示したが、AIC抗体にのみ陽性を示す細胞が一部認められた。一方、PDGFRα陽性細胞はほぼAIC抗体に対し陰性であったが、一部はAIC抗体に陽性を示した。さらに平滑筋層において、c-Kit陽性細胞はAICを発現せず、PDGFRα陽性細胞と完全に一致することが分かった。以上より、ICCとPDGFRα陽性細胞の中間的な性質を持つ細胞が存在する可能性が考えられた。今後、このような細胞が脱分化ICCであるか否かを検討する。また、PDGFRα陽性細胞は他臓器において多分化能を示すことが報告されているため、PDGFRα陽性細胞がICCの再生に関与している可能性についても検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度にはCre-Loxpシステムを用いたICCの細胞運命追跡を検討していたが、マウスの準備に予想以上の時間を要しており、解析に至っていない。一方でin vivoの解析に代わって、別のアプローチから脱分化マーカーの探索を進めており、AIC抗体が脱分化ICCやICCの再生を解明する上で有効である可能性を見出すことができた。以上の理由から現在までの進捗状況は(3)やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症時におけるICCの細胞運命追跡の確立を最優先に行い、脱分化ICCの存在を確認する。脱分化ICCの確認後はFACSによる遺伝子解析を実施し、脱分化マーカーの探索を行う。また、マウス消化管筋層から作製した培養小細胞塊を使用して、初年度に得られたICCの遺伝情報を基に、ICCと関連の深い成長因子の作用を検討する。
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Research Products
(2 results)