2016 Fiscal Year Annual Research Report
イタリア「アカデミー」のオペラ文化への貢献:モンテヴェルディとの関わりを中心に
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16H06786
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
萩原 里香 東京藝術大学, 音楽学部, 助手 (70783398)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | アッカデーミア / イタリア・オペラ / 音楽劇 / モンテヴェルディ / 17世紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
あらかじめ対象時期として設定していた1607年から1643年の間に活動実績のあった、北イタリアの都市を拠点とするアカデミーを調査するために、今年度はその対象となるアカデミーの選定を行なった。まず、ブリティッシュ・ライブラリーのデータベースで確認できる857のアカデミーから、当該都市と時代から、229のアカデミーを抽出した。さらに、この229を対象に活動内容の精査を行ない、音楽や演劇など、舞台芸術にかかわる活動実績の確認がとれるアカデミーを抽出し、最終的に34のアカデミーを選定した。この34を対象に、アカデミー間のネットワークの在り方をさぐっていくこととする。
また、2017年1月下旬より2月中旬にかけて、マントヴァの国立古文書館にて史料調査を行ない、16世紀の当時に発足していたアッカデーミア・デッリ・インヴァギーティ(好事家たちのアカデミー)に関する情報を得るのと並行して、この貴族集団のなかで重宝されていたユダヤ人がいたことから、ユダヤ人コミュニティの演劇カンパニーに関する情報収集もおこなった。貴族の集団であるアカデミーは、宮廷とのつながりを持ち、各種イベントごとでも君主と大きく関わりを持っていたことは当然であるが、ユダヤ人コミュニティの演劇カンパニーは、それ以前から君主のために音楽を用いた舞台芸術を実践しており、宮廷文化の発展に大きく貢献していたことがわかった。全ヨーロッパでユダヤ人を隔離する措置がとられてからは、宮廷で働く芸術家のなかに、改宗したユダヤ人が数多くいたこと、その中の重要な一人が、宮廷楽長であったモンテヴェルディと、とりわけ踊りの分野で関わりを持っていたという興味深い事実が浮かび上がった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査の時期が予定よりも遅くなってしまい、また国際学会への参加もあったため、年度内に計画の見直しを行なっていた。その意味では、ネットワークの状況を探るための調査対象となる、34のアカデミーを抽出できた時点で概ね予定通りの進捗であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1607年~1643年の時期に、音楽や演劇など、舞台芸術にかかわる活動実績を確認することができた、北イタリアに在った34のアカデミーを対象に、各アカデミーのメンバーの所属状況を確認し、芸術家個人を介してのアカデミー間のつながりを整理する。その後、出版された文献の内容や献辞等から、文化の伝搬に関するネットワークの在り方を考察する。
6月には本研究の時代選定に大きく関わる作曲家モンテヴェルディの生誕450年の記念イベントが、彼の活動地であった、クレモナ、マントヴァ、ヴェネーツィアの3都市で約2週間に渡って行なわれる。代表者は最終地であるヴェネーツィアでのイベントに参加の予定である。そして、研究の最終調整を兼ねて、秋ごろに再度の渡伊を検討、及び、国内の学会や研究会での口頭発表をいくつか予定している。また、上述のモンテヴェルディ生誕450年を記念して、演奏家も交えたシンポジウムの企画を立ち上げる予定である。
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Research Products
(3 results)