2016 Fiscal Year Annual Research Report
大気圧プラズマを利用した新型エネルギーキャリアの合成法の開発
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16H06790
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
全 俊豪 東京工業大学, 工学院, 助教 (90781310)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 大気圧プラズマ / エネルギーキャリア / アンモニア / 窒化マグネシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、再生可能エネルギーを貯蔵できる新しいエネルギーキャリアの合成法を提案する。近年、環境問題や化石燃料の枯渇などの原因から、再生可能エネルギーを水素に変換し、水素キャリアに貯蔵し輸送する技術の必要性が高まっている。本研究では窒化マグネシウムを新しいエネルギーキャリアとして提案し、再利用することでクリーンエネルギーサイクルの実現を目指す。窒化マグネシウムは貯蔵・輸送に適しており、水と反応して水素キャリアとして有望なアンモニアを生成する。一方、大気圧プラズマで生成した化学的活性種は高い化学反応性を有しており、従来では考えられない化学反応を引き起こすことができる。本研究ではサイクル実現のカギとなる窒化マグネシウムを大気圧プラズマで直接合成する技術の開発を研究目的とする。 平成28年度の研究実績は大気圧プラズマ処理で酸化マグネシウムと窒素から窒化マグネシウムを合成できることを突き止めたことである。上記の研究成果は本研究のガキとなる技術である。具体的には同軸円筒型大気圧プラズマ実験装置を製作し,中心の金属電極棒に市販の高電圧電源を用いて高電圧を印加することで,酸化マグネシウム粒子層全体において均一な大気圧バリア放電を形成する。放電領域で背景ガス(窒素)が解離し,生成された窒素ラジカルにより酸化マグネシウムの窒化が行われる。生成した窒化マグネシウムを水と反応させた結果,アンモニアが生成されたことを確認したため,上記の反応が実現していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究到達目標は大気圧プラズマ処理で窒化マグネシウムを合成できることを突き止めることであった。それに対して,平成28年度では大気圧プラズマ処理装置を作成し,3種類の酸化マグネシウム粒子を原料に大気圧窒素プラズマ条件下で合成実験を行ったところ,窒化マグネシウムが生成されたことを確認したので,当初の研究到達目標は達成したと言える。また,生成した窒化マグネシウム粒子を純水と反応させて生成するアンモニアを定量的測定できたため,そこから窒化マグネシウム粒子の生成量を定量的に算出できた。 一方大気圧プラズマ生成用電源に市販の商用電源と昇圧トランスを用いているため,放電周波数が低く,長時間合成処理を行っても放電電力が投入しにくいという課題がった。そのため,反応場でのガス温度は室温程度でしかなく,当初計画している500度程度からはるかに低い。また,水素などの還元性ガスを背景ガスに混合させることも出来ておらず,現在の背景ガスは純窒素を用いている。従って,現在の大気圧プラズマ合成条件は当初考えた最適条件からほど遠く非常に反応しにくい条件下で実験しているといえる。逆に言えば,今後反応条件をよくしていけば,生成量や反応効率は大幅に上昇することが予想できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究成果で,大気圧プラズマ合成装置を製作し,酸化マグネシウム粒子を原料に合成実験を行ったところ,大気圧窒素プラズマによる窒化マグネシウムの合成が可能であることが分かった。平成29年度の研究は大気圧プラズマ合成効率向上を目指して以下の研究項目を実施する。
1.高周波の交流またはパルスを大気圧プラズマ合成装置に印加し,反応場の反応温度を数百度程度まで加熱して合成反応を促進させる。加熱温度の上限は実応用を考えて,太陽光を集光して達成できる500度以下とする。 2. 現在の酸化マグネシウム粒子は粒子径100nm程度,背景ガスは純窒素を使用しているが,合成効率との兼ね合いで背景ガス組成と酸化マグネシウム粒子の粒径などの大気圧プラズマ合成条件の最適化を図っていく。 3. 酸化マグネシウム粒子表面に窒素系活性種を吸着する触媒を添加し,合成反応を促進させる。
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